図師雪鷹

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)の図師雪鷹のレビュー・感想・評価

5.0
"俺の舞台で勝手に勃起するな"
このセリフが何故かめちゃくちゃ印象に残っている。

まあそれはいいとして。

この映画は、かつて絶大な人気を誇り現在は落ちぶれたアクション俳優が、成功を掴もうともがく物語である。
かつて"バードマン"だった主人公リーガン。その頃の人気を取り戻そうと現在は映画ではなく舞台に出演していて、おまけに原作の脚色も手掛けている。この舞台に賭けているのだ。
しかし、そううまくはいかない。共演する役者が大根役者だし、その役者と交代で入ってきた俳優は情熱があるもののぶっ飛んでいて(例えば、脚本に従わないなど)、ヤク中の娘とは不仲で、公私ともに最悪の状況なのだ。おまけにリーガンの中には内なるバードマン が話しかけてきて彼を困惑させる。主人公の周りには大きな壁がたくさんある。
どうやったら自分は再び返り咲けるのだろう。どうしたら周りの環境を良くできるのだろう。その主人公の考えが想像もつかないラストへと観客を一気に牽引していく。
この映画には他の映画にはないスピード感とパワーがあるのだ。

それを作り出しているのが、撮影監督エマニュエルルベツキによるほぼ全編ワンカット撮影。実際はワンカットに見せているのだろうが、そこには緻密な計算が隠されており、観客が映画に没入できるような画面作りを徹底して行っているのだ。この映画は現実と仮想を織り交ぜた映画であるが、映画がワンカットに見えるので、今まで見てきたどの映画よりも現実と仮想が近いところにあるのだ。

そして、最後のシーンについて。白い仮面をかぶったリーガンだったが、彼はそれを脱ぎ捨て空へ飛び立つ。これは、リーガンが、バードマン としてではなく、リーガン自身として自己を掴んだということを示唆しているのだろう。

ワクワクしたシーンも盛りだくさん。空飛ぶシーンとか本当に良かった。

また見たい。
図師雪鷹

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