曇天

ジャングル・ブックの曇天のレビュー・感想・評価

ジャングル・ブック(2015年製作の映画)
3.5
本作の公開が近くなった頃、そういえば未見だったなと思い出して1967年のアニメ版を予習してからの鑑賞だったのですが、アニメ版がつくづく名作だったと再確認できる内容でした。お話もアニメ版の要素をなぞるように進んだり同じ楽曲が多く出てきたりするので、やはりアニメ版を観てからの鑑賞がベストです。

自分がリメイクものを観るにあたって気になるのはストーリーの改変点。実写映画ってことは大人が観るに耐えうるものに仕上げなきゃいけない。そのためアニメ版では周囲に守られるがままだったモーグリの立ち位置が大幅に改変されて、勇敢な男の子に成長する話に変わった。だからお話全体の雰囲気もシリアス寄りになったのだが、この中にあの軽快な名曲たちを入れ込むとどうにも合わない…! アニメ版は全体的にお気楽ムードだったからあのような楽曲でも許されてたけど、この実写版の中だとどうにも浮いてしまう。要はリアルなCG熊でミュージカルをやってのけたわけだ。まさかミュージカルシーンが2曲も入るとは思わなかった。喋るだけなら許容できても歌い出すとなるとさすがに違和感…いや流れた時はめちゃくちゃ嬉しかったけど。バルーの歌では案の定、曲終わりの繋ぎで急に不穏なシーンになってて凄く不自然。実写版で巨大化されたオランウータンが歌うにも動きが足りない。やっぱりアニメのキャラクターの動きに合わせた、アニメ版でこそ映える楽曲なのかなと。

ストーリーの細かい変更は特に不満なし。モーグリ対シアカーンの構図がカッコよかったから良し、それを軸にするならこんなもんかな。ライオンキング的になるのも、まあ元ネタがこっちだし。何よりアニメ版のラストは何の前触れもなくモーグリが自分から人間の村に入っていく展開で、それによって避けられない成長(こっちは性徴)を明示した。それが何とも言えない余韻を残してて名作たらしめていたので、今回それには遠く及ばなかった印象。

まあ見どころがないこともなくて、楽曲アレンジの使い方は上手かった。映像への期待は裏切らない。動物は見るからにCGでも(とはいえシアカーンと大蛇は迫力)、背景のジャングルはセットが大半なのだろうがほぼ本物にしか見えない。木に登ったショットは特に、セットと合成背景の継ぎ目がわからない。動物の言葉が分かることを除けば没入感は凄い。あとエンディングも秀逸。
評価は3.5にしたけど十分楽しめた。まあでも今はすぐにでもアニメ版を観直したい。
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