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きみはいい子のnanaのレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
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「万引き家族」とセットで観たかった映画。
「万引き家族」では、残酷なまでに『正しさ』をぶつけてきた高良健吾さんと池脇千鶴さんの役。
今作では、児童や親への対応に追われる小学校教師と、子供ふたりをもつ母親の役をそれぞれ演じています。

次々と問題が発生する小学校、どうしても幼い子供に手を上げてしまう母親、認知症気味の独居老人など、社会の問題点を描いた群像劇。
群像劇だけれど無理やりそれぞれの人に関わりを持たせて描くのではなく、あくまで同じ地域にいる、というくらい、多分あの人とあの人は夫婦なんだよな?と匂わせるくらいなど、やりすぎない繋がりとして描いていました。

驚いたのは子役。
どうやって撮影したのか?というより、あの「トガニ」同様、よほど慎重に気を使って撮影したのだろうと思わせる尾野真知子さん演じる母親の虐待シーン。
観ていて辛かったです。
あと、自閉症?何らかの障害があると思われる少年を演じた男の子が物凄かった。「ギルバート・グレイプ」のディカプリオを思い出しました。
本当にそういう子なのかと思って…ここだけ急にドキュメンタリーになったのかと思ったくらいでした。演技だったとは…凄いです。

下手するとちょっと説教っぽくなりそうな、美しすぎになりそうな終盤のとある宿題のシーン。
ここでの児童たちの宿題をやった感想を話すシーンが本当に素敵で!
(あのシーンは高良さんと子役たちのアドリブらしく、実際に宿題をやってきてもらったのかな?)クソガキめ…と思っていた子供が「あぁもう最悪!」って感じで恥ずかしがるとことか愛おしくて仕方なかった。
ひととおり聞いた後で、先生が絆とか美談的なことを語るんじゃなくて「先生もよく分かんないんだけどね!」っていう感じの結論になったのも好き。
そして、単なる良い話で終わる訳でもなく、宿題をやってこなかった子がいる苦さ。

どうか、彼等に一筋の光があると信じて。
何かが変わっていくと信じて。

今作の呉美保監督、是枝裕和監督、そして橋口亮輔監督(この作品を観てこの人の作品を凄く思い出した)あたりがいる限り、まだまだ邦画も大丈夫だ…なんて知ったようなことを思ったのでした。
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