このレビューはネタバレを含みます
キリアン・マーフィーがこの役を演じてくれてよかった。
特に初見は、彼の顔と佇まいで今がどの時代のシーンなのかを察する必要があるところもあった気がします。
名優たちのアンサンブルとして、サスペンスとしても面白い。
出演者をあまり調べず観に行ったので、デイン・デハーン登場にはテンション上がりました。
広島・長崎の映像や写真のひとつもない、というのは指摘するべきところかもしれませんが、むしろ描かれない恐怖があった気もします。
描かれない＝彼が知りもしなかったこと。
彼が原爆投下を決定的に知ったのは電話一本だけ。
あれだけ知識があり開発した張本人が、原爆の被害を実際の規模よりかなり小さく見積もっていた。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』的に、今作が「加害者側の作品」とするのであれば、被害者側の描写がない！で済ませずやはり日本がそれに応える作品を作るべきなのでしょう。
実際、山崎貴や原田眞人らの映画監督が今作のアンサーとなる作品をつくりたいと意欲を見せていると聞きました。
どのような出来になるか分かりませんが、先日ノーランと対談し、今ならハリウッドでのネームバリューがある山崎監督に作ってもらうのがやっぱり理想なのかもしれません。
今作を観て、唯一の被爆国であることでむしろ日本が世界で一番原爆や核というものを「過去のもの」としてしまっているのではという考えも浮かびました。
これは歴史上の出来事だけではない。
ラストに挟まれた核の映像はおそらく現代のもの。
あの日、日本で起きたことを伝え、二度と繰り返さぬよう未来につなげることは私たち日本人がやるべき大切なことだと思います。
