まりぃくりすてぃ

緑の大地のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

緑の大地(1942年製作の映画)
3.2
真珠湾攻撃(1941年)の少し後ぐらいの、日本のいわゆる“国策映画”。怖いもの見たさ・学びたさ・嗤(わら)い飛ばしたさ……イロイロ考えあって、観てみた。

二時間物だから厭な予感がちょっとしたとおりに、けっこう複雑なストーリー。でも、頭が慣れてからは、メロありの社会派ドラマとして普通感覚で楽しめた。“国策”なる語に私やっぱり構えてたんだけど、後半はあまり変なストレス受けなかった。

運河建設反対の中国人青年(ナカナカ美しい池部良さん)に感情移入しやすいが、「日中友好」を丁寧かつ官製暴力的に唱えつづける日本人技師(藤田進さん)ら建設推進の両国人もべつだん腹黒そうではなく、日本の悪徳商人一人が(コワモテではなくゆるめの)悪役を引き受けている。女性たちは、国籍には縛られずにさらにシッカリ慈しみ合おうと生活を歩む。───それぞれのそこそこのキャラ立ちが、見ていて苦しくない。
語弊あるだろうか? 全体として意外なほど“フェアな”作りに思えるのだ。(製作時期がミッドウェー海戦の前か後か知らないが)日本にはまだ日中間のある程度のフェアネスを描ける余裕があったってこと? もちろん、被侵略者からすれば「どこがフェアだ」となるだろうけど。

ラストはよくまとまっていて、気分よく私は観おえた。

ところで、悪徳商人役を不美男スタンスでこなした嵯峨善兵さんが、どうも私は苦手。原節子さんを輝かすべき複数の映画で(役柄上も、そして俳優としても)彼女の足を引っ張るっぽい変な雰囲気を出し、しかもセリフがほかの出演者と比べていつもモゴモゴ。役者というより左翼の書記長顔だし(当たってる? 笑)。