もっちゃん

エクソダス:神と王のもっちゃんのレビュー・感想・評価

エクソダス:神と王(2014年製作の映画)
3.5
圧倒的映像美とリドリー・スコット最新作ということで予告篇から期待していたが、お金をかけた部分に感動するのみにとどまった。聖書や神話を題材にしたストーリーにはどうも感情の欠落や腑に落ちない部分が生じるのは半ば仕方がないのだが。

「旧約聖書」出エジプト記に登場する最も有名な預言者モーゼの苦難と10の奇跡を中心に描いた今作品。聖書から伝わる厳かな印象のモーゼをできるだけ人間的側面をしっかりと描くことでドラマ的要素もあり、原書を知らない方も思ったより楽しめるのではないかと思う。
さらにモーゼの兄弟分としてラムセスを位置付けることで民衆の自由を導くモーゼと権力に固執するラムセスという対比関係が物語を分かりやすくしている。

本作のコンセプトでもある奇跡の科学的根拠づけは10の奇跡がそれぞれの奇跡の負の連鎖によって生じたという一見理論的に成立しそうなものだったが、やはり腑に落ちない感情もぬぐえない。有名な海割りシーンも引き潮だと説明されれば納得せざるをえないが、あの壮大さは圧倒的虚構感を感じてしまう。神話は神話として科学的に立証してはそれだけで価値を失うのではなかろうか。

さらに神のポジションが明確に定まっていない印象を受けた。奇跡と名をうってはいるが災害によってエジプト人、ヘブライ人の見境なく殺戮していると思いきや、突然エジプト人の子供だけを殺したりとやりたい放題。聖書に突っ込みを入れるのも無粋だが、違和感を抱いたのは否めない。

とはいってもプロットの不十分さはさておき、圧倒的世界観と迫力は一見の価値ありでさすがお金がかかっている分楽しめるのではないかと思う。リドスコの俺が面白いものを作る精神は嫌いじゃないし、上手くはまれば素晴らしい作品が生まれると思うのでこれからも諦めずにどんどん作っていってほしい。