ささい

レヴェナント:蘇えりし者のささいのレビュー・感想・評価

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
3.3
大いなる自然という神。

我々が自然を認めるのでは無い、あの偉大なる自然が、私を認めさせる。どうにも敵いそうにない。1ミリたりとも私は敵わない。
この世の全ては自然から派生したものだ、人こそがこの世界の頂点になったと思い始め、全ては人の制御の下にという現代、私たちは思い知らされたのだ、敵うはずがないと。
ある時はその自然に立ち向かおうと試みて敗れ、ある時は突如襲いかかるそれから身を隠し、何とかやり過ごす。手を挙げて全てを差し出し、受け入れ、自分もその自然の一員なのだという自覚だけが私たちを生かす。


この規模で大いなる自然をやられると、同じテーマの他の作品は全く歯が立たない。
美しい、迫力のある映像、グラスの全てが生々しく伝わる演技、自然の音も含めた音楽。
グラスの痛み、雪の溶ける湿度、血と肉の感触、凍える吹雪の寒さと、それを凌ぐ毛皮の温かさ、ありとあらゆる感覚を完璧に伝えきってくれる

ただの映像でなく、脚本のある映画であるため、ストーリー上は復讐劇となっているが、きっとこれは復讐しようがしなかろうが、何でも良くて、ただ1つ伝わるメッセージは本当に自然の偉大さだ。

光が生み出すカメラレンズのゴースト、吐息による画面の曇り、広角の構図、撮影技術が本当に面白い。繊細な映像と迫力のあるカメラワークや常に臨場感を出し、それでいて、レンズの曇りやゴーストはどこかこちらに、観客としての自分を映し出す。

川の音、気の音、火の音、呼吸、雪、馬の蹄湯気の音、緑の歯の音、皮の服の擦れる音、肉を裂くナイフ、そして、壮大でドラマチックであり、大きな悲しみとそれに伴う内に秘めた怒りを感じさせる坂本龍一の音楽。
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