Inagaquilala

幸せになるための5秒間のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

幸せになるための5秒間(2014年製作の映画)
3.6
大晦日の夜、飛び降りの名所であるロンドンのビルの屋上で、偶然出くわした自殺志願の男女4人。自分と同じ志向を抱えた人間を見ると、その気持ちが萎えるのか、お互いバレンタインまでは自殺を思い止まるという誓約を交わす。この物語設定に引かれて観ることになったが、これが存外面白かった。

この自殺志願チームを率いるのがピアーズ・ブロスナン扮するテレビ番組のキャスター。彼は淫行がもとで、スキャンダルに塗れ、テレビからは追放され、家庭も崩壊したため、梯子を担いでビルの屋上まで上ってきた。彼が飛び降りを逡巡していると、中年の女性が「順番を待っているので」と声をかける。このあたりはコメディ的な展開だ。そこに駆け込んでくる若い女性。引き止めようとする年長のふたり。そこへ今度は若いピザ配達人も飛び込んでくる。

リーダー格の存在であるキャスターの仕掛けで彼らは、一躍、マスコミのスターとなって追いかけられることに。身を隠すため南の島にハイダウェイした4人は、互いの自殺しようとした真の理由を知ることになる。

と、自殺を扱ったドラマであるが、微塵も悲壮感はない。むしろ前述のようにコメディ的展開で、この自ら死を選ぶというテーマに切り込んでいく。原作小説はあるらしいが、それぞれ4人が語り手となり、物語は軽快に進む。なかなかメイド・イン・イングランドのオシャレでブラックな味わいもある。最後まで楽しく観ながら、少ししんみりもさせる。現実味はほとんどないが、面白くは観られる作品にはなっている。かわいいお尻を見せるイモージェン・プーツがやたら魅力的だ、とても自殺志願者には見えないが。
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