なっちゃん

沈黙ーサイレンスーのなっちゃんのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
3.8

とにかくスコセッシを尊敬する。
このレベルまで日本を日本らしく表現した監督は世界初やし、めちゃくちゃ嬉しい。ラストサムライもワイスピも硫黄島もそうやけど、なんかなあ……そういうことじゃないけどまあいいか、みたいに諦めてた部分もスコセッシは理解しようとしてくれて表現してくれてて、日本人としてすごい嬉しい。もちろん完璧に表現できてるとは思わんけど(特に無宗教思想とかは)それはこっちもやから…とにかく理解しようと心を開いてくれたことが。日本人の歴史とか思想、キショいとこもあるけど面白いんやで〜〜!!ってみんながわかってくれたら嬉しい。お返しに、となるかはわからんけどわたしもこれからキリスト教とか宗教について勉強します。


28年かけて完成した大作で、主題が信仰とは?宗教とは?と、まあ壮大〜〜
無宗教なのでいちいちここでロドリゴどういう気持ちなんやろ?モキチは?キチジローは?とかうんうん考えてたらすぐ次の場面進んでて160分があっという間やった……原作読む……

ロドリゴは最初すっっごい高潔で、信仰を広めること、人々に尽くすことのためならなんでもする。全然人間っぽくない。でもロドリゴも人間なんやから、自分の人間性を見つめなあかんし、全編通しての苦難はそのための試練やったんやろうなあ。
言葉平易になるけどロドリゴめちゃくちゃうざくないですか?!(笑)いや、それはわたしが弱いからなんやけど、高潔すぎて!!弱い人間からしたら、どこ目線やねんお前!ええよな!!ってなった(笑)
村人に踏み絵踏んでもいいよね?って言われたら「踏んだらええよ」って言うしラストとかも、拷問されてる人を見て「棄教しろ!転べ!」とか言うけど、え?お前は?!って思った(笑)自分は棄教せえへんけど信徒は棄教させるってどう………?つまりそれは目の前の光景を見たくないだけのわがままでは?いい子ちゃんって感じがヤバイ………と思ってしまった。しかも捕まって死を予感した瞬間ブチ切れてやつあたりするし、"良いパードレ"である自分に酔ってる感が否めん。(まあわたしがロドリゴの立場なら即棄教してるのでこれは僻みです)

そんなロドリゴが行く先々についてくるキチジローはまさしくロドリゴの影。ロドリゴの一部であり自身の迷いであり弱い部分の象徴でした。軽蔑しながらも彼の告解を何回も何回も聞いて許すことでロドリゴも成長?というか自分を受け入れていった気がします。最後江戸でも一緒に住んでたし。

ガルぺは信者と一緒に死んでやってたので本当に尊敬しかない……ガルぺ自身が救いになったんだなと思った…

農民たちについてなんですけど、中盤で捕まったモニカがロドリゴになんでそんな目で俺を見る?!殺されるんだぞって言ったら「でも、死んだらパライソに行けるんですよね?パライソには苦役も年貢も痛みもないんですよね?」って言うセリフがえげつなかったですね。
ロドリゴはキリスト教の中にある崇高な真理を伝えに命がけで日本まで来てるのに、農民にとったら苦しみから逃れて死ぬための理由でしかない。もはや彼が信じた美しいキリスト教は日本で陳腐に歪められてしまってた。この局面でこんなこと言われるロドリゴかわいそうすぎましたね。美も善もクソもないですね。

宗教って縋るものじゃないのでは?神と向き合って、沈黙の中で自分の中から湧き出てくるものを大切にして、自分を好きになって生きるためのツールなのでは?ということが言いたかったのかなと思いました。
なっちゃん

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