ShinMakita

愛と闇の物語のShinMakitaのレビュー・感想・評価

愛と闇の物語(2015年製作の映画)
1.7


1945年、英国統治下のエルサレム。少年アモスは、ポーランド系ユダヤ人の母ファニアと、売れない作家業を続ける父アリエと共に暮らしている。アラブ人との共存を保ちつつの緊張した生活であったが、それなりに平和であった。しかし1947年、国連でユダヤ・アラブ分割統治案が採択されたことで、ユダヤ人の悲願である建国が実現化する一方、アラブとの対立が激化する。最初はのどかに火炎瓶用の空き瓶集めをしていたアモスも、日に日に友人知人がテロで命を落とす現実を目の当たりにする。配給、避難生活というストレスの中、理想との乖離から鬱を発症していくファニア。そんな母に寄り添いながら、たくましく生きていくアモスだったが…



「愛と闇の物語」。

以下、愛とネタバレの物語。

➖➖➖

ナタリー・ポートマンが監督脚本主演をこなした作品。世間的評価は低いけど、実に堂々とした作品でした。迫害後のユダヤ人がイスラエル建国までどう生きたのか、というのを一般市民の目で描く序盤はとてもフレッシュ。アモスがアラブ人の子をケガさせてしまうエピソードは、のちの中東戦争を暗示しているようで印象的です。中盤以降は、実は割と普遍的な「私の人生こんなはずじゃなかったのに」症候群の話と、死の誘惑に囚われた母を救えなかった少年の悔恨話へとなっていきます。いつも優しく物語を創作して聞かせてくれた母が壊れていく。そう言えば、母の物語には常に死がつきまとっていた…と解るクライマックスは、ちょっと胸にグッときたな。



…バーホーベン先生の「ブラックブック」のエンディングでちらっと描かれていたけど、イスラエルを建国してからがユダヤ人苦難の本番だったんだな。卑屈さと猜疑心が強いユダヤ人と、住んでいた場所を奪われた怒りのアラブ人。2つの被害者意識のぶつかり合いが、いつの世でも戦争の火種になるんだよね。
ShinMakita

ShinMakita