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ヴィヴィアン・マイヤーを探してのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

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アマチュア写真家ヴィヴィアンは作品を公開されることは拒まなかったとは思うが、自分のプライバシーがさらされることには耐えられなかったと思う。素晴らしい写真には感動したが、人を避けて生きてきた無名のヴィヴィアンを裸にするようなドキュメンタリーはかわいそうで涙が出てきた。死後に発見されたアーティストとして既に公の人になるのだろうか。それともストーリーをつけて作品に付加価値をつけようとしているのだろうか。

身寄りのないヴィヴィアンは乳母として住み込みで働きながら、ストリート写真を撮り続け、公開せずにこの世を去った。膨大なフィルムをオークションで380ドルで落札したジョン・マルーフ氏が、現像してみると類い稀な作品だとわかったが、撮影者がヴィヴィアン・マイヤーという無名の乳母であることしかわからなかった。そこからヴィヴィアンが何者で、なぜこれだけの未公開、未現像のフィルム、ネガが15万枚も残されているのかを、関係者を突きとめ、ヴィヴィアンの謎を探っている。

もう彼女のプライバシーは聞かないであげてほしい、と思う一方、絶妙なシャッターチャンスの写真は多くの人に見てもらいたいという気持ちはわかる。

構えずに、呼吸をするように、人びとの人生の瞬間をカメラに吸い込み続けたアマチュア写真家、ヴィヴィアン・マイヤー。日本でも2年前に展覧会があった。

ヴィヴィアンは多くの人と接するのが苦手なようだから、生前には写真を公表する行動に移るのは難しかったとは思うが、きっかけさえあれば作品を見てもらいたいと思うこともあったのではないか。

ドキュメンタリーとして、写真だけにフォーカスしてほしかった。第一人者が数名絶賛しているが、美術館は拒否している。様々なカメラマンからの影響が見られ、一つのスタイルにはこだわっていなかったという。プロはスタイルをもち、アマチュアはその場で好きに撮る。何が違うのだろうか。生前に発表されていたら、間違いなく脚光を浴びただろうという。

日常の切り取り方がジャーナリストの目線にも近く感じた。
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