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野火のとぽとぽのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.0
狂ってる。黒く汚れた顔は赤くただれ、血は流れ、手足は引きちぎれるーーーー花と肉、赤く鮮血の色「食べていいわよ」
イカれてる。あれもこれも人間が人間にして、人間が引き起こしてきたこと。銃は動物を撃つもの、武器は動物を殺すもの。人間は猿、動物。人間狩りという異常な精神状態をこの上なくまざまざと見せつけられる。死ぬのは怖い、生きて帰りたい、それだけ。まさしく極限、目も背けたくなるほどに。各人にそれぞれ欲望や自信、渇望するものがあり、その根拠のない威勢がこのような限界の状況では心の支え・頼りみたいになり、空虚に腹を満たした感覚を与えるように、肥大していく。その執着と汚さに目が離せない。自分もこうなるのではないかという気持ち・共感(史実、ノンフィクション)と、今を生きる自分はこうならなくて良かったという気持ち・他人行儀(フィクション)が入り交じって心を無茶苦茶にされる。誰もがこうなる可能性(危険性)を秘めている、いざとなれば。
劇的だけどエモーショナルじゃない(むしろそれを排した)表情がスゴい、"目"の映画。構想20年ーーーー自主映画の生々しさが奇しくも本作の語り口にマッチしていて圧倒された。緻密さ・巧みさと煩雑さ・無骨さが入り雑じるような撮影、編集が、これまた凄まじい演技をする役者たち(塚本さん、リリー・フランキー)を生にすがり付くただの人間として捉え、そのエグさを浮き彫りにする。細い!スゴい役作り。正直こういう少しドラッギーで癖のある見せ方(語弊を恐れずに言うならば"crazy"?)が本作のストーリー・メッセージを語る上で最適な語り口かは分からないけど、息を飲むのは確か。アップに耐えうるリアリティー。90分にも満たない尺でこの疲労感はヤバい。まるで記録映画・ドキュメンタリーかVR。一度は見るべきだが、二度は見ないであろう戦争映画の傑作。人類に過去のことを思い出させ再び警鐘を促すという意味での表現の責任。
「お前もな、絶対おれを食うはずだ」
勝手に関連作『野火(1959年)』『炎628』『レヴェナント』『沈黙』『グリーンインフェルノ』『バトル・ロワイアル』
TOMATOMETER75%
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