TT

クリムゾン・ピークのTTのレビュー・感想・評価

クリムゾン・ピーク(2015年製作の映画)
4.0
毎回作品を作るたびにオタク趣味全開なギレルモ・デル・トロの新作は、まさかのゴシックホラー。今の時代にビッグバジェットで古典的なホラーを作ったという時点で評価したくなるが、中身の方も今までのデルトロ作品で散見できたゴシック嗜好が爆裂していて楽しかった。

他の人が言ってるように、細部の細部にまでこだわって作り上げた美術は素晴らしい。本作最大の見所と言っても過言ではない。ヴィクトリア朝期を再現するというよりは、デル・トロが考えるゴシックな世界を映像化しているように感じられた。メインの舞台となるオンボロ屋敷の美術も、過去に繁栄していたのを想起させるような作りこみ具合だった。抜け落ちた屋根からそぼ降りた雪が積もった屋敷内の中央、くすんだ絵画、過去の秘密が隠された地下へ至るエレベーター。すべてが美しくもまがまがしい恐ろしさを放っていた。また、セットや小道具だけでなく、衣装含めた登場人物たちのデザインにも舌を巻いた。髪をとかしたミア・ワシコウスカの姿が、ジョン・エヴァレット・ミレイの「花嫁の付き添い」そっくりに見えて仕方がなかった。

幽霊表現もなかなか良かった。幽霊というと半透明で白や青の光を利用した表現になることが多いが、本作で登場する幽霊たちは赤と黒色。加えてその容姿が腐乱した状態とも言える程度に崩れているため、完全にズル剥け。その姿が『ヘルレイザー』みたいだった。そんな姿形をした幽霊が白と青と緑の背景の中で登場することで、赤のコントラストが際立っていた。そういえば、デル・トロが製作に関わる予定だったPS4ゲーム『P.T.』の体験版に同じようなショック描写が出てきた。

また、デル・トロらしいブルータルなゴア描写が出てくるのも御愛嬌。ミア・ワシコウスカ演じる主人公の父親が殺される場面がジャーロっぽくて良い。特に、黒い手袋が出てくるあたりが。

楽しんだこと前提で欠点を挙げるなら、美術が絢爛豪華な割りに派手な出来事が起こらないことだろう。デルトロが本作を作るうえで影響を受けた作品の1つに『アッシャー家の末裔』があったが、あの映画にインスパイアを受けたのなら、クライマックスは城が崩れるなり燃えるなりしてくれないと。屋敷が地盤沈下しているという設定があるから、てっきり最後は赤い粘土の地面に沈んでいくんだろうと思ったのになぁ。
TT

TT