オレンチ

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女のオレンチのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

『トム・クルーズと一緒にスタントをする!?それなら俺をクビにしてくれ!』
──ジェイク・ジョンソン。
『そこが君の持ち味なんだ!』
──アレックス・カーツマン。


ユニバーサルが誇る古典モンスター達が大集結する、"ダーク・ユニバース"第1作目(一作目というのは少々引っかかるものがあるので後述します)にして、『ミイラ再生』のリブート作品!
ついに動き出しましたねー。ダーク・ユニバース。
発表時に公開された集合写真、そうそうたるメンバーでしたね。
しかも『ミイラ再生』のリブートがトム・クルーズ主演!ということでなかなかワクワクしたものです。

※後半に『ドラキュラZERO』のネタバレにも触れるかと思います。

というわけで、字幕2Dを2回、吹替2Dを1回、各種特典・メイキング、主要キャストによる音声解説字幕版を1回鑑賞しました。

まず最初に身もふたもないことを言いますが、音声解説字幕版が一番面白かったですw
このバージョン、割といろんなDVDやBlu-rayに収録されているんですが、主要スタッフやキャスト達とだべりながら映画鑑賞してる感覚で、2、3回目にはオススメの鑑賞方法ですよ。


でですね、内容はというと、とにもかくにもユニバース意識しすぎですね。
本当にこれにつきます。
『バットマン v スーパーマン』にも同じことが言えますが、最近超絶流行ってるユニバース作品に期待するのは、まさかの大集合感です。
ここでいうまさかとは、以前の映画界ではあり得なかった魅力ある主演キャラクター達の競演ですよね。
魅力あるってところがミソで、魅力はどうやって築くかといえば、積み重ねです。
キャラクターの魅力はカッコいいセリフや、素晴らしいアクションで作られるのではなく、そこに至るまでのプロセスこそ大事なんです。
『バットマンvスーパーマン』がまだ観れるのは、登場するキャラクター達のことを元々知っている、もしくは調べれば調べるほど情報が出てくるからです。

本作でいうと、
『この作品はユニバース作品なんだ』
『これからもっとすごくなるぞ』
みたいな描写が多く、本作で最も観客に魅力を与えなくてはいけないニック・モートンというキャラクターの掘り下げがおざなりになっていました。
なんか、ニックの動機がよく見えないんですよね。
根っからの盗人っぽいかというとそうでもないし、タクティカルスキルが高そうかといわれたらそうでもないし、ロマンも感じず、正義感も弱い。
ジェニーと関係も弱いですね。自分をモンスターに変えてまで体を張る動機が感じれませんでした。

そもそもですね、『この作品はユニバース作品なんだ』って描写が個人的にめちゃめちゃノイズになるんですよね。
なんか深刻そうに話を進められてもまだこっちはそこまで世界観に浸ってねーし。みたいな。

しかもですね、ユニバースを示唆するために登場するのが"あの"ラッセル・クロウですからね。
ニック・モートンというよくわからない男よりも、ジキルとハイドという強烈なキャラクターをラッセル・クロウが演じているわけですから、無駄に存在感を放ってしまうのは必然ですね。
この存在感が良いか悪いかといえば当然悪いです。
理由は簡単で、本作においてジキルとハイドは、いてもいなくてもどっちでもいいからです。

よくよく考えてみたら、大御所になりつつある、トム・クルーズとラッセル・クロウが同じ画面で格闘してるなんて、それだけで血沸くシーンのはずなのに、役者にキャラクターが付いてきていませんよね。

『ヒート』が燃えたのは、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの魅力をじっくりと積み上げた結果であって、本作はただの余興程度にしか見えませんでした。

さらにこのユニバース意識しすぎ問題は、モンスター映画としての根本的な部分にも影響を及ぼしてますね。
なんていうか、単純に怖くないんですよ、アマネットが。
まず大前提として物語の推進力である、アマネットがニックを追う理由は選ばれし者だからですよね。
ニックからしたら呪われたことになり、『ミイラ再生』のバックヤードにある"ツタンカーメンの呪い"を踏襲した形になっていて良いのですが、問題はなぜ呪われたか?ですね。

《墓を荒らした場にいたから》
というのであれば、ジェニーがあまりにも置き去りにされているし、
《アマネットを解放したから》
だとすると、ヴェイルが呪われる理由がよくわかりません。
生前セトにされかけていた男に似ているわけでもなく、なんか無理やり関わらさせられている感じがして推進力が弱いんですよね。

あと何よりもテンション下がったのが、結構簡単に人間に捕まっちゃいましたよね。
このシーン、ユニバースの意識もチラついてより嫌いなんですが.『トレマーズ』のグラボイズみたいな意思疎通が図れないクリーチャーでないかぎり、モンスター映画の中盤ではやっちゃいけない展開なんじゃないっすかね。

アマネット以外のクリーチャーの殆どが"ゾンビ"なのもなんか気にくわないですね。
さっきまで生きていて、出来立てホヤホヤの歩く死人は、僕の中の定義では"ゾンビ"なんですよね。
ミイラは一応、人間の手でちゃんと処置されてそうなっていますからね。
確かにミイラもゾンビも殆ど変わらないんですが、やっぱ神秘性にかけるし、そこは差別化して扱って欲しかったです。
メイキングみてても作り手たちがゾンビって呼ぶ始末だし。そりゃダメだろっていう。

最後にネガティブな意見をもう一点、ジェイク・ジョンソン演じるヴェイル!
彼の扱いがほんっとに勿体無かったなと思います。
レビューの冒頭にも書いた通り、ボヤキばっかり言ってる俳優さんでして、
『サハラ』でマシュー・マコノヒーをサポートしたスティーブ・ザーンのように、『ナショナルトレジャー』でニコラス・ケイジにぼやくジャスティン・バーサのように、"巻き込まれ型サイドキック"とでも言いましょうか。

ニックとの絡みをもっと増やせばいい化学変化を生んだんじゃないかなーと思います。
監督もそこが持ち味だ!とか言いながら第1幕で早々の退場ですからね。
その後も登場さえはしますが、なんかよくわからない死人としてですからね。
扱われ方次第では、かなり斬新な立ち位置なんで良い方向にも転ぶと思うんですが、本作の場合死んだことで物語の行く末を知っているというか、ある意味導き手として扱われているわけで、それでは"巻き込まれ型サイドキック"としての良さはかき消えてしまいます。


とまぁ、文句ばっかりずらずらと書いて着ましたが全てがダメというわけではないです。

例えばアクション!さすがトムさんですね。
スタントコーディネーターの方、どこかで見たことあるな〜と思っていたら『ミッションインポッシブル:ローグネイション』も同じ人でした。
トム・クルーズが本気で信用してるんでしょうね。
特に第1幕から第二幕へ移るターニングポイントの墜落シーン、あそこすごいです。
無重力状態になって、ジェニーに必死でパラシュートをつけるシーンがありますが、あれガチで無重力状態でやってるんですよね。
意気込みがさすがというかなんというか。笑
あとヒロインのアナベル・ウォーリス。
どっかで見たなーと思ったら『死霊館』のスピンオフ、『アナベル』ですか。
なんとややこしい。
まぁそれはどうでもいいんですが、アナベルさん、かなりいい動きしてましたね。
トム・クルーズの走りにガチでついて行けてて、今後アクション女優としても活躍できるんじゃないかなーと思います。

あと、自然史博物館の地下にある秘密基地的な場所(名前忘れた)のデザインもいいっすね。
法医学と考古学が融合したようなデザインで良い意味で古めかしく、目を凝らすと最新テクノロジーがあったりとモンスターユニバースの心臓部としてはかなり良いデザインでした。
ここに出て着た半魚人の腕とか、ヴァンパイアの骸骨とか、ニヤリとしちゃいますよね。
傭兵をぶん殴る本が『ハムナプトラ』での重要アイテム、《アメンラーの書》なのもニヤニヤします。
ただ逆にユニバースを意識させるならこの程度のニヤニヤで留めておくべきだったなと思います。
ジキル博士も冒頭くらいの登場に抑えておいて、ジェニーからニックが奪った手紙が誰からなのか?"ヘンリーより"って書いてありましたよね。
あのくらいのチラつきがちょうど良かったかなーと思います。

最後にですね、ユニバース1作目についてなんですが、予想というか願いというか、『ドラキュラZERO』も仲間に入れてあげてと思いますw
ユニバーサルモンスターの中では絶対に必要なモンスターですし、ルーク・エヴァンスはなかなか良かったし、まだドラキュラ役が誰か発表されてないしで、微かな希望があるんじゃないかなーなんて思ってますw

そもそも先行きが怪しいプロジェクトではありますが、ユニバーサルの地球がひっくり返ってからのダークユニバースのロゴ、もっと見たいので是非とも頑張ってください!


最後まで長文・乱文にお付き合いいただきありがとうございました。