<概説>
精度の高い未来予測を可能にする仮想現実演算装置シミュラクロン。経済革命すら起こしうるその装置の周辺で、開発者の怪死や謎の失踪事件といった不審な出来事が連続する。この装置に隠された秘密とは何なのか。今尚通用する世界観の本格SFスリラー。
<感想>
これが50年前に構想されていたのがまず驚愕。
10年前と20年前にもこれに類似した世界観の作品が映画史に名を刻みましたが、それはベースとなる機械装置あってこそ。しかしこの時代の演算装置の水準といえばApple1がようやく実装された程度でした。そこから発想を飛ばしてここまで精緻な構想をするとは、開いた口が塞がらない。
またSF作品でありながら、観念的な作品というのが現代にあっても異色。
開幕30分でわかるように、演者の演技がかなり不自然なんです。これは監督の一発撮りが原因らしく、正直雑で娯楽としては壊滅的な出来。
ただ世界における自然とはいかなものであるかという、監督自身提起した問題を検討するにはこれは必要不可欠。邦題のように登場人物の全身にあやつり糸が伸びている幻覚すら見えるほどの不自然さ。ついつい自分の腕にもあやつり糸は垂れていやしないかと確認しました。
それでもやっぱり娯楽としては「んんん???」となる箇所が多々あるので、SFフリークの方以外には強く勧められないかもしれません。映像芸術として見るのが吉。