JunIwaoka

わたしに会うまでの1600キロのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

4.0
2015.8.28 @ 角川シネマ新宿

リース・ウィザースプーンがバックパックを背負ってボロボロになっていく姿に、説得力が感じられず(ミア・ワシコウスカちゃん贔屓です)、観終わった直後は消化不良。そんなもやもやっとした帰り道に思い起こせば思い起こすほど、対照的である彼女の母親であるローラ・ダンの存在の大きさを感じて、歩くことの意味に辿り着いた。
人生は残酷であって、折り合いのつかなくなった社会で生きる意味を見つけることは辛い。旅に出ることの理由は人それぞれだけれど、泥沼から抜け出して自分を見つめ、取り戻すための唯一の手段だったのかもしれない。それは全てを投げ捨て広大な自然の中で埋れてしまいそうなちっぽけな生にしがみつくことに理由はいらないから。
自分の存在によってがんじがらめの生活を強いられていた母親は、彼女とは違って逃げ出すことすら出来なかったけれども、どんな苦労があっても悲観することはなかった。それが母性であって、それを誰よりもそばに居て見ていたからこそ、理不尽な運命によって知る自分の存在の虚しさ。砕け散った心はフラッシュバックする断片的な記憶のかけらによって傷だらけになりながらも、一つ一つ拾い集めるようにして歩き続ける。
必要としたことは女性の偉業を讃える他人の言葉ではなく、どんな自分であっても自分のことを認めてあげる強さだったのかもしれない。
人の幸せなんて相対的なものではなく絶対的なものであって、ありのままの心で生きる強さを持ち、なんら特別ではない自分の存在に喜びを感じること。


鑑賞後、映画館を出ようとしたときに名前を呼ばれた。ビックリして振り返ったら母親が偶然同じ映画を観ていたみたいで手を振ってた。
親には敵わないな。いま思い返すとなかなか感慨深いことだったのかもね。
JunIwaoka

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