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キャロルのnagaoKAshunPEiのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
4.0
映画冒頭、テレーズの恋人リチャードの映画オタクの弟が「登場人物のセリフと本音の違いを分析している」という場面が出てくる。『キャロル』はまさに、そんな映画だった。というか、リチャードの弟は完全に、監督からのこの映画の見方についての指南書みたいなものだったのだろう。

そんな登場人物たちの感情の機微を汲み取るのに暇がない作品だった。物凄く上品に整頓された画面から、登場人物たちの家庭や恋人、そして自らの職に対してのかさつきが物凄く感じられた。
言葉の節々から強がりやたて前など、このときこの人物たちはなにを考えているのだろうという思いが止まらない。セリフに限らず、ルーニー・マーラ、ケイト・ブランシェットはじめ俳優陣の何気ない所作が素晴らしかった。

あと監督の映像での語り口が非常に良かった。手紙を書く→ポストに入れる→郵便が届く…というなんでもない一連の流れがとても自然で、言葉なしでの状況説明が、観てて堪らなかった。
ガラスの曇りや水滴が、登場人物たちの心情を移す鏡となっていたのも良かった。

ただ、これだけ映像で語るのが上手い監督なのに、それセリフで言っちゃうんだ…みたいなのも多かった。先にも挙げた、リチャードの弟のセリフだったり、タイムズのオフィスでテレーズが口説かれるところだったりが、キャラクターの先にある監督や脚本家など物語の裏の人物たちが見えてしまったのが残念。

それでも、俳優陣はじめ細部まで凝りに凝られた画面が堪能できる作品でした。
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