nagaoKAshunPEi

燃ゆる女の肖像のnagaoKAshunPEiのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.5
フードで頭を覆い隠し、顔が見られないよう振る舞うエロイーズ。
彼女の散歩相手を装いながら、肖像画の執筆を頼まれたマリアンヌ。
2人が初めて海岸に散歩に出て、マリアンヌはエロイーズの後を追う。
道が悪路なのか、身体が上下に大きく揺れ、不意にエロイーズのフードが頭から外れる。その瞬間のついに顔が見られるという嬉しさと、彼女が自ら曝け出したわけではなく見てはならないものを見てしまった居心地の悪さに、涙が出そうになった。
エロイーズは、フードやマスクといった衣服で姿を隠し、マリアンヌは、本当の目的を偽っている。
キャンバスに塗り重ねられる絵の具とは対照的に、2人の心のベールを丁寧に、そして繊細に剥がしていく、そんな作品であった。

画面のどこを切り取っても美しく、長編第4作目にして、このフランスの女性監督は巨匠のような存在感で、作品はこれからも語り継がれていくであろうクラシックの域に達していると感じる。

当たり前のことだが、映画は始まると必ず終わってしまう。
マリアンヌもあの島に行った時点から、その場所を離れないといけないことが決まっている。
映画とは、別れを約束された装置であり、約2時間その世界に没入することを許された儚い時間であることを思い出させてくれた。これぞ映画。これが映画だ言わんばかりだ。
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