TAK44マグナム

ゴジラ キング・オブ・モンスターズのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

5.0
これぞ怪獣映画!!


監督のマイケル・ドハティはどれだけ怪獣映画オタクなのだろうか?
どれだけの怪獣オタクたちが集まったら、これだけの大怪獣総進撃映画を作れるのだろうか?
「ゴジラ」「キングコング髑髏島の巨神」に続くモンスターバース第三作となる「ゴジラ/キング・オブ・モンスターズ」は期待以上に大怪獣たちが最高に暴れまくる大傑作だった!!


ゴジラとムートーによる大破壊から数年、実は世界中で、他の怪獣たちが秘密組織モナークによって隔離されていた。
その一体であるモスラが卵から孵った時、環境テロリストの一団が襲撃。
技術者のエマと娘を誘拐、エマが製作した怪獣の生体音を特定する機械「オルカ」も奪われてしまう。
彼らの目的は一体何なのか。

モナークの芹沢博士らは、エマたちの行方を追うために、エマの元夫でオルカのプロトタイプを作ったマークの協力をあおぐ。
どうやら南極にエマたちがいることが判明するが、そこでは最強の怪獣と言われる「モンスターゼロ」が氷の壁に封じられていた。

「モンスターゼロ」が蘇り、それはギドラと呼称される。
圧倒的な破壊力を誇るギドラに続き、テロリストは次々と怪獣の封印をといてゆく。
火山からラドンが出現、モナークの戦闘機も為す術がない。
もはや頼みの綱はゴジラだけであったが、人類はまたしても愚かな選択をしてしまうのであった。
はたして、地球の新しき王となったキングギドラを倒せるのか?
地球の覇権をかけた大怪獣バトルが勃発する!!


怪獣映画の定義って意外と難しい。其々の趣味嗜好が、かなり影響してくるので、全ての怪獣映画ファンに「これこそが怪獣映画の王道!」と認めさせるのは非常に困難ではないかと思います。
そこで本作はどうだったかと問われると、個人的にはこれ以上ないぐらいの王道であり、怪獣エンターテイメントとして最高級の逸品であることは間違いないと感激した次第です。
では、ゴジラ映画とは?となるともっと定義づけるのは難しく、世界中にファンやマニアが多いだけに一筋縄ではゆかないでしょう。
なので、本作を観て「これはゴジラ映画としては落第点」と肩を落とす方もいるかもしれません。
しかし現状、これだけゴジラをリスペクトして、これだけの予算をかけ、これだけスペクタクルな怪獣活劇をみせてくれるのは本作の製作スタッフをおいて他にないのでないか。
この素晴らしい偉業に、素直に賞賛をおくりたい!
きっと、ありとあらゆる怪獣映画を研鑽して完成したのであろう本作は、今後もマスターピースとして君臨するに違いない、「怪獣映画のひとつの到達点」だと思いました。

まず、なんといっても主役は我らが怪獣王ゴジラ!
前回より日本のゴジラっぽくデザインがリファインされ、それでいてマッチョな体型は物凄くパワフルで強そう。
日本人が好む浪花節なところも見られ、完全にではないけれども立ち位置はヒーローそのものに描かれています。
なにしろ、ウルトラセブンの「セブン暗殺計画」や「ガメラ2レギオン襲来」みたいな展開まで用意されていますから。
クライマックスでの、鬼ような形相のド迫力といったらなく、ゴジラを怒らせちゃ絶対にダメだな!と有無を言わしません。
今回、あの伊福部昭作曲によるゴジラのテーマがメチャクチャにツボるところでかかるので、それまでに溜めるに溜め込んだ全てが一挙に発散される瞬間に脳みそが宇宙や異次元へでもトリップしてしまったかのような解放感を感じられました。
もう、これはゴジラ教です!
この解放感を味わいたくてゴジラを信奉してしまうのです!
ゾクゾクとして、全身に鳥肌がたち、脳内麻薬が分泌され、男前すぎるゴジラの魅力にどっぷりと浸かり、神と崇めてしまうのです!
ヤバい!完全にヤバい!
語彙力が崩壊するほど、ゴジラに魅入ってしまいました!
そういえば、今回ゴジラは大切なものを失ってしまいます。
そう、○ー○レスになってしまうので、次作からどうするのか心配です。
あ、だから髑髏島に行くのかな?

お次はモスラ!
思いのほか出番は少なめでしたが、冒頭から幼虫が誕生して存在感は抜群。
日本のモスラのイメージよりかは尖ったデザインですが、怪獣の女王とされるだけあってどこかスウィートでエレガントなイメージも巧く融合しております。
本作のモスラはメス、つまりは女性として、モナークのメンバーからは最初から認識されています。
これは、蛾(moth)という名前の由来に母(Mother)という意味も込められているところからして正しい解釈。
ゴジラとは一種の共生関係にあり、最終決戦でも活躍します。

原典通りに火山(ラドン初登場は阿蘇山です)から出現する巨大翼竜がラドン!
ラドンは東宝怪獣の中でも古参で登場回数も多い割に、これまで目ぼしい活躍がみられなかった不遇な怪獣(と、勝手にイメージ)でしたが、本作のラドンは一味違います!
モナークの戦闘機などものともせずに回転攻撃で撃墜してゆくラドン!カッコいい!カッコよすぎるぞ、ラドン!
立ち位置としてはスネ夫的ポジションなのが泣かせますが(あるフォロワーさんがトランスフォーマーのスタースクリームみたいと仰っていて凄く合点がいきました)、もしかしたら本作に登場する怪獣の中で一番格好良く、株を上げたのはラドンかもしれません。
因みに、ラドンは海外だとロダンと呼ばれているので本作でもロダンです。
ゴジラの発音に最後まで拘った渡辺謙によれば、ラドンも「正式なラドンという名前で」と意見したみたいなんですけれど、昔からロダンなのでそれは通らなかったんですって。

最後は本作における絶対悪!
王よ永遠なれ!キングギドラであります!
キングギドラといえば、宇宙超怪獣であったり、未来怪獣であったり、日本国を守る天の神だったり、作品毎にその都度肩書きが変化してきましたが、本作のギドラは自然界の常識から逸脱した悪魔竜王!
南極の永久凍土に封じ込められていたなんて「デビルマン」の魔王ゼノンみたいですけれど、羽根を開いた姿はまさしく悪魔そのものです!
ゴジラを上回るパワーと、超高電圧の引力光線を武器に、他の怪獣どもを従える最強最大の宿敵ですが、ジョジョにディオ、ケンシロウにラオウ、アムロにシャア、キカイダーにハカイダーと、やはりヒーローには宿命のライバルが必要というわけで、ゴジラにとってキングギドラがそういった存在の一番手だというのは多くのゴジラファンの共通認識でしょう(二番手がメカゴジラ、三番手にガイガンか?)。
今回、はじめてフルCGで描かれたギドラですが、三本の首それぞれがウネウネと動きまくり、千切れた首も脅威の再生能力で瞬時に再生するなど離れ業をやってのけます。
とにかく強い!いやらしいぐらいに強いキングギドラ。
ほぼ勝てる気がしない強大な相手にゴジラがどうやって立ち向かうのか?
それが本作の見どころにもなっています。
もう少しだけギドラ自身による都市破壊を見せてくれたほうが、ギドラの悪魔性をより強くしたと思うし、最後にカタルシスを与えてくれると思ったのですが、それは注文のつけすぎかもしれません。
基本的に充分、暴れてくれますから。
ゴジラとの激突シーンは大迫力!
あとは、お馴染みのテロテロテロ〜という鳴き声を聞かせてくれれば満点だったのですが、獰猛さを表現するためか動物的な鳴き声に変更されていたのが個人的には残念でした。
マイケル・ドハティ監督によれば三つ首それぞれに名前が付いているとの事で、イチ、ニ、サンと日本名なんですって。
そのまんまだよ!


人間ドラマはそれなりでも怪獣たちが大活躍するので手放しで褒めたいところ、我々日本人としては毎度のことながら敏感になってしまうのが核の扱いや描写ですね。
日本が唯一の被爆国であり、福島第1原発の事故もしかり、ゴジラの原点が核の脅威だったこともあることから余計にその点は慎重にならざるおえません。
思えばギャレス版「ゴジラ」では、核爆弾を離れたところで爆発させれば、さほどの被害は無いかのようなテキトーでぞんざいな扱いに戦慄したものでした。
やはり、核の被害を直接受けた歴史のない国では想像力が欠如してしまうのか。
しかし、本作においても核兵器の扱いは軽んじているように見えますが、その実、驚くほど今までとは違うスタンスで核に言及していると思いました。
即ち、「核そのもの」が悪なのではないというスタンスです。
劇中、渡辺謙演じる芹沢博士が、ある理由のために核爆弾を頼ります。
芹沢博士といえば、広島に原爆が落とされた8時15分で止まったままの懐中時計を大切にし、核兵器が拡散してゆく世界を憂う人物。
そんな彼が核兵器を利用するのです。
それは何故か?
劇中でカイル・チャンドラー演じるマークに、芹沢博士はその答えを伝えるので、是非ご覧になってお確かめください。

問題なのは、核を兵器として使用していること、そして完全なコントロールが出来ないまま利用していることなのだと思います。
要は、核も銃もナイフも使い方次第で人を生かす道具にも人を殺す凶器にも、そのどちらにもなりうるのです。
殆どの生命は太陽の恩恵をうけているのは周知の通りですが、そもそも太陽こそが核融合によって熱エネルギーを生み出しているわけで、もちろん危険な放射線も絶えず発しています。
その放射線をヴァン・アレン帯が防ぎ、我々は地球という星に生かされている。つまり、核が悪なのではなく、正しく利用するならば生命にとってこれ以上ないほど有益なものなのです。
間違った使い方をした結果が、かつての広島や長崎の悲劇であり、チェルノブイリや福島第1原発の事故であり、人類に牙を剥くゴジラなのです。
残念ながら現状では核を絶対安全に運用することは叶いません。
だからこそ知恵を絞り、いつの日か安全に核を扱えるように前進してゆくしかないと、ゴジラは人類を軌道修正させるために破壊も辞さない神として先頭に立ち続けるのでしょう。
今までのゴジラは放射能汚染のために近づくだけで危険な「死神」のように描かれてきましたが、それとは180度違う新たな設定が付け加えられています。
それこそが、本作製作陣の核に対するスタンスを決定づける証拠ではないでしょうか?
多少の甘さは感じられるものの、かなり核についての認識が改まってきているのでは?と感じました。
だからといって、アメリカでは原爆の投下を正義とする思想がまだまだ一般的なのが辟易とさせられますが、少なくともゴジラを愛する者ならそんな思想は持っていないと信じたい。
こんなにゴジラをリスペクトした映画を作る者たちならば信じたいのです。


多少の不満点も踏まえて、これで満足できないのなら怪獣映画へのハードルを上げすぎかもしれませんよ(汗)
それぐらい、本当によく出来た怪獣映画、そしてゴジラ映画でした。
エンドクレジットだけをとっても、どれだけ日本の特撮やゴジラ
に敬意を払っているのか一目瞭然ですし、半端ないリスペクトぶりに日本の怪獣ファンとして感謝の念に堪えません。

最後に、もしこれから観る方がいらっしゃいましたら、ギャレス版「ゴジラ」、「ゴジラ(1954)」、「ゴジラvsデストロイア」、「三大怪獣地球最大の決戦」、「怪獣大戦争」、「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃」、「ガメラ2レギオン襲来」、「ガメラ3邪神覚醒」辺りを抑えておくと、より楽しめるかと思います。
あ、あとウルトラセブン第39、40話「セブン暗殺計画(前編・後編)」も観ておくとアガるかもしれませんね。

兎にも角にも、ものすごく面白い怪獣映画の傑作には間違いありません!
ムートーの交尾ギャグで笑かし、芹沢博士で泣かせる。
無敵の怪獣たちが世界をリングにどつき合う。
まさに死角なし!
日本はゴジラが生まれた地なのですから、我々が観に行かなくてどうするんですか!
一瞬だけれど日本も映るし!
よほど怪獣映画にアレルギーがない限り日本人としてマストな超娯楽大作だと確信しております!
出来るだけデカいスクリーンとデカい音響をオススメします!
モンスターバースはまだまだ続き、次作ではいよいよキングコングとゴジラががっぷり四つに組みあいますよ!
多分、新怪獣も登場するでしょう。
楽しみすぎてどうにかなりそうなので、まずは本作で怪獣バトルの醍醐味をご堪能ください!!


劇場(109シネマズ湘南・IMAX 3D・字幕)にて