このレビューはネタバレを含みます
ロー・チーリョン監督によるホラー作品である本作は、越してきた新居で相次ぐ怪奇現象によって情緒不安定に陥ってしまった一人暮らしの若い女性ヤンと、カウンセリングを受けるために訪れてきたヤンの診察を行う精神科医のジムに襲い掛かる恐怖を描いたものとなっていて、内容としては、怪奇現象の原因は"心の病"と断言する精神科医のジムが、両親の離婚が原因で心に負った深い傷や、妻子を土砂災害で亡くした新居の家主との交流によってエスカレートしていった怪奇現象に精神を病んでしまったヤンを親身になって治療していく中、彼女に回復の兆しが見えたことをきっかけに恋仲となり幸せな時間を過ごすも、ヤンの過去に触れたことや、自身の心に潜んでいた闇を呼び覚ましてしまったことで自分自身も怪奇現象に悩まされ、次第に精神異常を患い過去のトラウマと対峙していくという物語が映し出されるわけなのだが、2002年製作の作品なので今観てしまうと古典的なホラー演出や雑な特殊メイクが際立ち、恐怖心というものを全く煽られない、とてもチープなホラー映画という印象を強く受けるものとなってはいるのだが、それでも本作の脚本はとても面白く、恋仲となった2人を同時に恐怖に陥れるのではなく、前後半で対象となる人物が切り替わる点や、怪奇現象の原因を"心の病"と断言していた精神科医のジムの精神が崩壊していく様など見応えもあり、そしてホラー映画でありながら恋愛ドラマに比重が置かれたことも良く、個人的には好きな一作。今作がレスリー・チャンの遺作であることには居たたまれない気持ちにさせられましたし、理由は違えど死因が死因だけにジムと重ねて見てしまった。作品の評価には関係はないんですけどね、寂しさを覚えてしまった。色んな意味で印象的な作品でした。