曇天

マッド・ガンズの曇天のレビュー・感想・評価

マッド・ガンズ(2014年製作の映画)
3.5
深刻な水不足で枯れた田舎の土地で生きようとする家族を描いた話。

舞台は近未来で、ロバの代わりに作業ロボを使ったりしているが、ドローンやビッグフットなど最近お披露目されているロボットに形状が似ている。より身近で現在と地続きな未来を描こうとしているのがわかる。
水のパイプラインを通す工事は民間でやってるっぽくて、自分の土地に水を通してもらうにも作業チームとの取引が必要になってくる。なんだか人々は行政も存在してないような立ち回り方をしてて、よりマッドマックス風味といえばそうなんだけど、どっちかっていうと西部劇の世界観に近いと思った。警察もなく法律が弱い時代の、互いが契約を守ることによって成り立つ世界観というか。

まあ、そういうどうでも良さげな設定が本編にどう作用しているかというと、主人公一家は母親が町の病院に入院していて、父親と姉弟三人の家庭。親父が一人で家族を支えなければならないが、土地は枯れてて作物は作れないし水パイプを通して貰おうにも取引は上手くいかない。貧しい生活と束縛にイライラする娘は心が離れがち。親父は親父なりに努力しているんだけど舞台設定のせいで形無しのダメ親父に見えてしまう。つまり、まずは父親の無力さを描くための舞台、そして過酷な状況下で歩き始めようとする子供達の姿を描くための舞台。空想上の抽象的物語ではなく現実の生活の過酷さを表すために使ってる点で意味ある設定だし、真新しい使い方。
なんだか『フローズンリバー』や『ウィンターズボーン』と並べてみてもいい気がしてきた。

アメリカ南部(だったかな?)の西部劇設定で父親の物語とくれば、これに染み入る米国人も多いのだろうが、日本人からしたらもう少し踏み込んで話広げてくれてもいいんだけど?という印象。緊張するシーンでも気にせず淡々と進むので多少ハラハラしながら観れたけど。折角息子にも良い出会いがあるのにその続きは⁉︎とか。
ガンはマッドでも複数でもない、毎度のように邦題で釣ろうとする日本の配給のやり方は徹底しててむしろ潔いのでは。センスはゼロだけど。原題は”子どもたち”を意味する『young ones』。
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