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名もなき塀の中の王のtheocatsのレビュー・感想・評価

名もなき塀の中の王(2013年製作の映画)
3.6
非エンタメドキュメント風、重い何かが残る

手の付けようがない暴れん坊の囚人。少年院では手が負えず大人の刑務所へ移送。
そこでも捕らえられた野獣のように気に障ると誰であれ食って掛かる。
その刑務所には実の父親も収監されており、何とか息子を刑務所に馴染ませようとする。
父親は刑務所牢名主の下で働くナンバー2的存在。
しかし、父親必死の〝保護心理”も全てには手が回らず、息子を疎ましく思う囚人や刑務官たちにも狙われ始める・・・


何の飾り気もエンタメ演出もなくひたすら殺伐とした刑務所内物語が綴られる。

しかし驚くのが個人房の扉がオープンで容易に囚人同士交流が出来てしまう点。あれじゃ派閥形成され、悪巧みも簡単に出来てしまうだろう。

グループセラピーに参加した少年服役囚も最期の方では怒りを制御できるまでにはなったのに、杓子定規な所長により言いがかりをつけられ懲罰房行き。
そこでの出来事にはオッ!と意表を突かれることになる。まさか所長自ら・・・

息子を守りたいがための父親のいわば〝下剋上”も全く予想外のエピソード。

結果的に刑務所内の現実的厳しさと父親の愛情を認識することになった元暴れん坊は、他の囚人と仲良くやっていけそうな雰囲気を漂わせながらエンドとなる。

なかなかリアリティのあるダーティーな世界を延々見せられながらも、見終えた後は微かな浄化感が得られたような気がした。

立て続けの下らない邦画エンタメの後だけに、本作にはなおさら充実を感じたのかもしれない。

3.55の四つ星
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