Kuri

百日紅 Miss HOKUSAIのKuriのレビュー・感想・評価

百日紅 Miss HOKUSAI(2014年製作の映画)
3.9
実在した絵描きの話をアニメで描くっていうだけで入れ子になっていると思うのだけど、
そこで描かれる絵画にも
上手いけど表面だけの作品とか、
バランスが悪いけどなんかムラムラする作品とか、誰もが言葉を失うような力作とか、いろいろな種類があることを説得力を持って描き分けられていて、

しかも
物語世界の風景自体は
まるで浮世絵から引っ張ってきたような色鮮やかで何処と無くコミカルで、
主人公の声を演じる杏さんは歴史好きで幕末の事情にも明るくて、、
とか、考えてると
どこからが入れ物でどこからが中身なのかわからなくなるような構造なんですよね。

そんな中で登場人物たちは魅力的に生き生きと動き回ります。

お話自体は至極淡々と進みますが
スクリーンに眼を引きつけて離さない引力と空気感が画面から伝わってきて、原監督の手腕に唸ることしきり。

橋の上で風を感じる瞬間と、その橋を舟から見上げる瞬間との連なり。
雪積もる中で遊ぶ盲目の妹に幼い自分を重ねる現在/過去の記憶。

淡々とした短編の連なりなのに、ちゃんとアニメーション作品だからこそ表現できる瞬間が詰まった作品になっていて、いやはや参りました。
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