Inagaquilala

コロニアのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

コロニア(2015年製作の映画)
4.0
自分としてはホラー映画などよりずっと恐怖を感じる作品。

冒頭にまず「事実にインスパイアーされた物語」と出る。どこまで脚色しているかははかりかねるが(監督の言葉によれば、主人公の男女は創作らしい)、ここで描かれる、慈善団体の名を借りた秘密警察とも通じる脱出不可能の施設は、とにかく恐ろしい。

「コロニア・ディグニダ」と名付けられたこの場所は、周囲を電気が流れる鉄条網で囲まれ、つねに監視の目が光っている。支配しているのは「教皇」と呼ばれる男。いちおう宗教的儀式を司っているが、実態は少年愛と暴力を嗜好する異常性格者。コロニアの中では男女は別々にされ、子供たちも大人からは隔離されている。

物語の舞台は、アジェンデ政権がクーデターで倒れ、軍事政権による恐怖政治が始まったばかりのチリ。このコロニアに恋人のダニエルが捕らえられていると聞き、ルフトハンザ航空のCAであるレナ(エマ・ワトソン)は、単身乗り込む。

ここから始まる脱出劇が物語のメインなのだが、いったいどのようにしてこの難攻不落の要塞のような施設から逃げ出すのか、若干すれ違い的要素も交えながらスリリングに展開していく。このあたりはかなりスクリーンに釘付けになる。

ラストには「アルゴ」を思わせる空港での圧巻のチェイスシーンもあるが、全編を通じてじわじわと押し寄せる恐怖感は半端ではない。エンドクレジットが出たところで、劇場内には妙な安堵感が漂っていたほどだ。

新たな展開を求めたい男女には、逆説的デートムービーとしてお勧めしたい。
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