小波norisuke

草原の実験の小波norisukeのレビュー・感想・評価

草原の実験(2014年製作の映画)
5.0
「衝撃のラスト」と謳っているので、身構えて観ていたのだが、想像を遙かに超えて、心底、魂消た。ああ、こういうことかと、タイトルが突然に意味を成す。打ちのめされた。陽は昇りかけて沈んでしまう。愕然とした。

台詞が一切ない。しかし迫力のある映像で、終始圧倒される。360度に広がる大地と大空。少女と父親が暮らす小屋と、小屋の近くにある小さな木しか、突起物がない。あまりに平坦で広々と開けた空間に不安な気持ちになる。地平線に沈み、地平線から昇ってくる真っ赤な太陽。美しくて沁みる。夜の闇が驚くほどに深い。草原の風や、豪雨が迫ってくる。

壮大な自然とは対照的に、小屋の中は簡素だが、居心地がよさそうだ。少女が父親に履かせる暖かそうな毛糸の靴下。少女が父親にそっとかける、オレンジがかった朱色の生地に白の小花模様のブランケット。豪快なお弁当。壁に貼った大きな世界地図。そして独特のコラージュで飾られたスケッチブック。

少女が美しい。繊細な心の動きをわずかな表情の変化で表現している。

少女も、父親も、幼なじみの青年も、日本人にも見える。誰かに似ているけれど誰だろうと考え続けてしまった。結果、父親は思いつかず(観たことあるんだけどなぁ)、青年は印象だけだが亀田興毅さん、少女はやはり印象だけだがKAT-TUNの田口くんと長澤まさみさんが14歳の頃。違うかな。。。。演じている女の子は撮影時14歳で、韓国とロシアのハーフだそう。とにかく美しい。

誰にでも勧められる映画ではないが、私にとっては必見の衝撃作。エンドクレジットの音楽に肌が粟立った。
小波norisuke

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