老夫婦が「おいしい生活」を夢見て銀行強盗を企てるが、その計画の隠れ蓑として開店したクッキー屋が予想外に繁盛してしまった事から事態はおかしな方向へと向かうという話。
最初から最後まで笑える良質なコメディでありながら、ストーリーとしても良く出来た作品。
ウディ・アレンの慌てふためいた時のコミカルな動きがとにかく可笑しかった。
当初計画していた銀行強盗はアッサリと警官にバレてしまいあっけない幕切れを迎えるが、これで終わり？と思っていると、警官から「クッキー屋をフランチャイズにして稼ごう」と提案されてあっという間に一年後、そのクッキー屋は一大企業に成長してしまい夫婦は大金持ちとなる。
夢見てた生活ならいくらでも叶えられる程の財産を持っているはずだが、事業の拡張などに精を出し始めたり、社交界に溶け込む為に学をつけようとしたり、目的がズレ過ぎて物語がどこへ向かうのか分からない。
若き美術家のヒュー・グラントが現れ、妻に教養を教えるといった名目で怪しい計画を練っている事も分かり、ますますどうなるか予想がつかない展開に。
そういった二転三転するストーリーの中に、学が無いとどっちの世界でも生き辛いよという残酷な現実も突きつけてくるあたりはウディ・アレン色が強いのだけど、それをラブストーリーとしてまとめる辺りは流石としか言いようが無い。
セレブになった夫婦の生活が崩壊した瞬間に、当初の目的である強盗にまで辿り着いて二人だけの愛の証によって「おいしい生活」を手に入れる。
なんだか落語の様に上手く出来過ぎた話だが、本当に面白かった。
ヒュー・グラントが実に憎たらしい役。
