koss

聖少女拷問のkossのレビュー・感想・評価

聖少女拷問(1980年製作の映画)
3.8
窓の外の雨、雨中を行進する軍靴のオープニング。若松孝二の中ではめずらしい感情が動かされる作品。掛川正幸の脚本は論理的であり抒情的でもある。赤とんぼの歌に導かれる軍国主義下の女の哀しみと貧困、戦争と男の野心。

娼館で出会う女と男。同じ百姓に生まれながら、女は家族のための身売りで娼婦。男は白米が食え成り上がれる軍隊。客の種類を毒づく女のモノローグ。男は上官の虐めを受け、侵略で暴行殺戮を重ねそれを誇る。駆け落ちを見逃してと拝む仲間の娼婦は幼馴染と真冬の川で心中。死んだ孫娘を背負って娼館を出ていく老翁。女が軍国主義へ一撃を加えるラスト、窓辺に赤い襦袢で立つ女と霏霏として振る雪が美しい。
koss

koss