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モアナと伝説の海のdm10foreverのネタバレレビュー・内容・結末

モアナと伝説の海(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

【前に進めばきっと何か見えてくる】

今年のディズニーのテーマは「海」ですね。
思えば2013年の「アナ雪」以来、「ベイマックス(2014)」「ズートピア(2016)」と、いわゆる『ヒロインもの』からは離れた作品を作っていたディズニーが久しぶりにお姫様をテーマにした作品を作ったな、と。
ただ、今回は「村の長」という、いわゆる「プリンセス」という華やかとはちょっと違う作品になっています。質素な暮らしの中にも逞しく生きるという今までに無いヒロイン像が描かれていました。
彼女は幼い頃から海を愛していましたが何故か父親は頑なに海に近づくことを禁止します。自分も若い頃に珊瑚礁の向こう側へ行こうとして失敗し親友を失うという辛い過去があったからです。
しかし、モアナは海に選ばれた特別な女の子でした。彼女は生まれながらにして、いつか海に出るという宿命を背負っていたのかもしれません。それは彼女達のルーツを知る旅の始まりでもありました。

マウイとの出会いはありましたが、基本的に今回の作品は「出会い」が極端に少ないのが特徴です。立ち寄った街で出会う人々や、主人公を付狙う盗賊等々。。マウイを除けばほぼいないと言ってもいいくらいです(途中海賊に襲われますが、あれは出会いというか何というか・・・)。
つまり常に「自分」と向き合うことで「自分の弱さ」や「信じるべきもの」「家族」「自然」・・・今まで漠然とした考えたことがなかった様々なものが見えるようになってきます。
そして自分達の先祖は勇敢に海を渡って生きてきたという誇りも取り戻すのです。
これがモアナが海に出る意味であり、海がモアナに託した意味でもあります。
彼女は勇敢です。だけど「勇敢」なだけではないところにディズニーの上手さとセンスを感じました。
ディズニー映画が嫌いな人は、きっとこの「センス」が鼻につくんだと思いますが(笑)
よく言われる「(ディズニー映画は)子供に観せても安心、安全」という言葉ですが、実はこれは間違いだと思います。ディズニー映画はタッチやテイストは「童話」のような感じですが、実は限りなく「寓話」に近いものが多く、子供でも理解しやすくはなっているが、テーマとしては深くて、時には残酷なものもあったりします。
きっとそういう深さを感覚的に感じることが出来た人達が心理的にディズニーに惹かれるんだと思います。
あとはキャッチーなキャラクターを生み出すのが見事。「何これ?」って思うのがあっても、不思議と「ディズニーマジック」にかかれば、知らないうちに息の長い愛されキャラへと変貌していることが多いです。

脱線してたので本線復帰。
モアナに込められたメッセージとは「自然との共存」とか表面的なことだけではなく、「人間がどう生きていくのか」という恒久的な問に対して「自分の信念に基づいて力強く生きていく」という答えを返しています。
今までのプリンセスものにあった「私は誰?」⇒「あなたはたった一人しかいないかけがえのないあなたよ」というハードルの低いQ&Aではなく、「私は誰?」の答えを全て自分で切り開き、答えを作っていくというバイタリティのような逞しさを感じました。

泣くような映画ではありません。ただ、観た後は元気になれるんじゃないかな?そんな映画でした。
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