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ナイトクローラーのHOHOのレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
4.0
仕事がなくどん底の状態だった男が、パパラッチになる物語でした。そう書いてしまえば、昨今の日本のスクープ合戦を思い出し、「クズやなー」と生理的な嫌悪感を抱くかもしれませんが、この話は、我々のもっと奥底の、本能的な部分の恐れを喚起するものだと思います。
人間が好きではないルーにとって、他者の破滅の瞬間を撮影することは苦ではないどころか、やった分結果が出る「やりがいのある楽しい仕事」です。彼にとっては、人間の感情の動きや、倫理的観点はほとんど意味を成しません。何が自分のモノになるか…評価、権力、名誉、金、選択権、そして女性も、自分の欲しいという気持ちがいかに叶えられるか、それを最優先します。その姿は、どんなに笑顔になっていても、醜いとしか言いようがありませんでした。
人間って、二面性があると思います。その二面性を大きく二つに分けて、a:美しいものを見たい気持ちと、b:醜いものを見たい気持ち、としましょう。aに普段隠されて出で来ないbが表面化したとき、我々は同時に存在するaによって、罪悪感と自分への恐れを感じると思います。…としたとき、常にbを追い求める人間って、ものすごく我々にとっては怖い存在なのではないかと。実際bを自分の中にあることを認めざるを得ませんから。
ルーを見て、私の中にbがあると感じざるを得ず、それに大きな恐れを感じました。本当に身近に、欲を達成することを最優先する人がいたら…その人の醜さを見ることに快感を覚えてしまったら…そう考えると恐ろしいです。
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