JunIwaoka

ナイトクローラーのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
4.5
2015.8.26 @ ヒューマントラストシネマ 渋谷

大きく見開かれた目に正気はない。その目に映るものはきっとただの物であり、すべては利用できるか出来ないかだけだろう。ナイトクローラーというモンスターは現代社会の排泄物であり、彼の常識を逸脱した行為をサイコパスと言うのなら、それを求めてしまう社会もまたサイコパスであると言える。彼の本質はたびたび画面に映る腕時計が象徴していて、出生に関しては描かれていないけれど、きっと愛情を知らずに生きてきたのだろう。彼の向上心や飲み込みの速さは、境遇が異なればもっと違った形で社会に認められていた存在になっていたように思える。しかしその不遇でさえ特別なものではなく、現代社会が抱える事実。
ただのパパラッチ映画かと思っていたので、期待をいい意味で裏切りぐいぐいと引き込まれてしまったのは、風刺が痛烈でリアリティを感じる部分だと思う。映画"ゴーン・ガール"でも描かれていたように、人は自分が信じたいと思うことを信じて、見てみたいと思う事実だけを望む。人が望む画を求める行為を主観的に見せられることで、その先を見たいと思う欲求を駆り立てる。モラルを越えて良心を咎められことを狂人に押し付けて、その先を求めることはテレビ局も視聴者も同じであり、コンプライアンスという流行りの文句がいかに矛盾したポーズであって、市場原理によってそれらの行為が正当化されてしまうことに恐ろしさがある。もちろん存続して行くためには利益が必要で、利益=視聴率を求めることがなによりも正しいとされる社会への皮肉だ。

最近はすっかりハンサムキャラが定評のジェイク・ギレンホールだけど、突き抜けたアホ役か入れ込み過ぎて一線を越えてしまう印象が強いだけに、そーそーそー!こういうジェイク・ギレンホールが見たかったのよ!と大満足でした。
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