小波norisuke

とうもろこしの島の小波norisukeのレビュー・感想・評価

とうもろこしの島(2014年製作の映画)
4.5
グルジア(ジョージア)と、グルジアからの独立を求めて闘ったアブハジア。両者の間を流れるエングリ川は、春の雪解けと共にコーカサス山脈の肥沃な土を運んで中洲をつくる。人々は、この中洲でとうもろこしを育て、厳しい冬を越すための食糧を得る。

映画は、途中まで一人の男が、中洲に渡り、小屋を建てようと、もくもくと作業する姿を映し出す。男は、髪や髭は白く、動作もゆっくりではあるが、がっしりとした身体つきで壮健そうに見える。台詞も音楽もない。男が作業する音や自然の音だけが響く。しかし、映像に力があり、惹き込まれた。

途中で孫娘らしき少女が登場する。しかし、二人はほとんど会話もせず、カメラは相変わらず二人がもくもくと働く姿を映し続ける。

時折、銃声音が響く。紛争はごく間近に迫っている。 しかし、男と孫娘は、敵であろうと負傷者を助け、島に乗り込んでくる兵士たちに逆らうことなく、ただひたすらに自分たちの日々の営みに勤しむ。ああ、人間が生きるとはこういうことなのだと、ふと思わされた。

劇中の数少ない二人の会話。「ここは誰の土地?」孫娘が尋ねると、男が答える。「耕す者の土地だ」。毎春、川が山の土を運んでできる島。確かにそこはグルジアでもアブハジアでもなく、生きるために耕す者の土地なのだ。川が運んできた島は、季節が巡るとまた川によって運ばれていく。人間の営みが自然の力と共にある。

季節を通して成長していく少女が瑞瑞しい。

紛争を背景としているが、人間の営みを詩的に、静かに、しかし、力強く描いた人間讃歌だと思う。

冒頭、男が土から掘りだし、ずっと大事にしていたものが何かわからなかった。。。
小波norisuke

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