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エンド・オブ・ザ・ワールドのTAのレビュー・感想・評価

3.4
 西暦2006年、中国の台湾制圧にアメリカが干渉した結果勃発してしまった核戦争は北半球を死滅させただけでなく、残る南半球にも放射能の脅威を残した。唯一生き延びた米原潜の一行は未だ汚染されていないオーストラリアに上陸するが、オーストラリアに僅かに残った人々にも、終末の日が刻々と迫っていた。
死の恐怖は秩序を破壊し、町は荒廃の一途をたどり、人々の心もまた乱れていく。絶望が重く圧し掛かる中、死滅したはずの北半球から送られてきた一通のメール。「絶望するな」
様々な思惑が入り交じる中、人類は最後の希望を求めて、今一度北半球へ向かうことに。
 59年にグレゴリー・ペック主演で映画化されたネヴィル・シュートの終末SFの古典『渚にて』のリメイクで、製作は作品の舞台となるオーストラリア。元の作品は見たこと無かったけど、何せ41年ぶりのリメイクだからCGで完全武装かと思いきや、ストイックに登場人物とディテールの描写に徹し、物語に厚みがあって見応え充分でした。その甲斐もあってか、有りがちなパニック、ディザスター・ムービーに成り下がることなく、堂々約3時間半の長編でありながらぶっ通して観ても飽きず、むしろ見進めていくうちに高まる悲壮なドラマから目を離せなくなっていた。
本作には所謂ローランド・エメリッヒ的又はマイケル・ベイ的な派手な演出や画面の圧は無いし大勢の人々が一気に犠牲になるような激しいシーンも無い。ただただ登場人物一人一人の死が丁寧に描かれる。しかし人物描写が細やかなだけに、感情移入と死の繰り返しで劇中何度も涙ぐむはめになった。
核戦争後の世界を題材にした映画は幾つもあるけれど、最も現実に近い世界の終わりを描いていると感じるだけに完全なフィクションとは思えない。だからこそ、この救いようの無い物語には何度もため息を漏らしてしまうのだろう。
希望を失い、数週間後に死ぬと覚ってからの笑顔がどれだけ悲しみに満ち溢れていることか。自身の最期に向けて全力で人生を全うしようとし、燃え尽きようとする姿に心を打たれないワケが無い。

ところで、出演しているのが見慣れない役者さんばかりだなと思って調べてみたら、これはTV用に作られた映画だった。

どおりで。

途中、死体がまばたきしちゃったりもするけど、それはご愛嬌。

しかし劇中に出てこない荒れ果てたNYと自由の女神像をパッケージに持ってくるのはあんまりだ。それが見たかったんだよ!!CGとは分かっていてもその荒廃美に惹かれてこの作品を手に取った人は少なく無いはず。
あと、酒やけのようなとてつもないハスキーヴォイスでフェロモン撒き散らしているレイチェル・ウォードもなんかクセになります。
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