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アバウト・レイ 16歳の決断のVigocultureのレビュー・感想・評価

アバウト・レイ 16歳の決断(2015年製作の映画)
5.0
『あまちゃん』凝縮版!!!
生まれ変わりたい娘と、
問題だらけのシングルマザーと、
孫への愛だけがあるおばあちゃんと。

LGBTはたしかに物語のフックにはなってるけれど、
女の子が男の子になる話であり、
少年が青年になる話でもあり、
家族が家族である話でした。

家族とアイデンティティの物語。

この映画は"世の中に在るべき映画"なので満点。

複雑な問題を重ねに重ねてるけど、明快、闊達なセリフと映像で語られるからふんふんと思いながら入り込める。

ダウンタウンにある高級なんだか安いんだかわからない3階建の家の中は、クラシックやコンテンポラリーアートやなんやでごちゃごちゃ。
長い階段も歪んできしみまくり。

これがこの家族(この物語)を象徴してる。

レズのばあちゃんが男を好きなふりをした(今よりもっとフリをしなければならない時代?)ことで母さんが産まれて、母さんも色々あって、娘がトランスジェンダーで息子に。


登場人物全員コンサバなんだかリベラルなんだかわからない。
二律背反の連続。
それが16歳の揺れ動くアイデンティティと共振して、崩れ落ちそう。

でも人ってそういうもん、家族ってそういうもんやん。
そしてそれを繫ぎとめるのが愛やん、という当たり前に臭いヒューマンドラマを、いい具合に納めてる。

さすが『リトルミスサンシャイン』が最高に面白かっただけある。

金言の連続。

ずーっとナイキのCMみたいな色合いと映像で、PCで見慣れたような映像をスクリーンで観るのもまた新鮮。
コントラストと黄色味がやけに強い。

それからエルファニングの顔の演技の力強さ。
鼻と口で絶妙に感情表現してる。本当お見事。
『ネオンデーモン』では妖精のように神秘的な女性性を放ちながら、今作では脇毛生やして男(として生きる権利を得るために苦心する少年←これ重要)になりきっていた。

好きな女の子に言われた言葉の端に傷ついたり、
高校生男子の下世話な会話に入りたそーにしてる顔といい、絶妙です。
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