もなみ

ミス・シェパードをお手本にのもなみのレビュー・感想・評価

3.9
姑が要支援なので、観てると身につまされた。

マギー・スミスが本当に匂ってきそうだった。
イラっとくる扱いにくい老人ぶりや、救急車に乗せられる時の気高い表情など、お見事と言うしかない。

老いとは、介護とは。
認知能力や精神に問題が生じた人間の自立とは、自由とは。

生きるとは。人生とは。

罪とは、赦しとは、信仰とは。
親切とは、それは問題の本質から目を反らすだけの逃げなのか、怠惰なのか、欺瞞でしかないのか。

様々な問いをシニカルな笑いに包みながらも、救急救命士や介護の現場で働く人々には静かな賛歌を送っている作者の目線は温かい。
ただのネタで、14年間も庭先にホームレスを置いておけるものではない。施設に入れた母への贖罪の意識もあったのか。

なんだかんだ言いながら、彼女を見守った近所の人達は偉大。お子さんが立派に育って何より。

ネタに苦悩する作家としての目線と、それ以前に生活者としての常識、二つの意識に苛まされる作家の業も、軽妙な演技でさらりと描かれて秀逸。

それにしても、認知に問題のあった彼女の罪の意識につけこんで脅し続けた男は憎い。

そして、彼女から音楽を奪った不寛容な司祭が一番の罪人であると感じる。
神から与えられた才能を精一杯生かすことが、すなわち神への賛歌であると、なぜ導くことが出来なかったのか。
もなみ

もなみ