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ブラックパンサーのVigocultureのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
4.6
ブラッペンサー

次の10年の文化的方向性を決定づけるエンタメ王道傑作!
これは本当によく出来てる。
よく作り込んでる。本当に。
ライアンクーグラーはストーリーテリングに長けた監督です、上手い!

キーワードは『シームレス』
いかに壁を取り去って繋ぎ合わせていくか。
物も、人も、世界も。


予告編のあの見飽きたスローモーションでの着地シーン、半年前くらいから映画館で観るたび「またマーベル特有のやつか、観ることないかな」くらいに思ってたけど、いやそんなん関係ないの。
完全に独立したSF。

言うなればスターウォーズのとっかの星の物語であり、
近未来の007であり、
白人のいないマッドマックスなんですよ。

ダークナイト→スカイフォール→マッドマックス→ブラックパンサー

高い次元で未来を想像してる!

でも、暗所の撮影はもうちょい頑張って欲しかったな。
バットマンも基本黒×暗だから細部はわかんないんだけど、その場合は引かなきゃだめよ。暗所でのもみ合ってるとこはそんなに寄ったら何もわからない。

『クリード』で没入感を引き出してたワンカットでのアクションを多用してるのはいいけど、明るいとこだからね、それが活きるのは。継承戦はそれが活きてて楽しかったよ。

でも、予告編でふーんてなってたカーアクションが思いの外、すごい面白かったです。
ヴィブラニウム最強っていいたいだけのシーンなんだけど、よく伝わってきた。


あとはもうプロダクトデザインがすごい。
端的に表してるのがエンドロール。独特なデザインを線だけで全部表現できてる。
(それがシームレスにつながる、見応えあるエンドロールできた。)

これはもうそのまま物語世界の作り込みがすごいってこと。
『メッセージ』のプロダクトデザインは、先の2010年〜17年の極致だと感じてて、不要なものを削ぎ落としきったものだったのに対して、
今作は、全てに意味を持たせて派手めに装飾するっていうことに成功してる。

ブラックパンサーの首輪に金と銀があること。
黒が映える極彩色でボディコンシャスな衣装。
螺旋の階段→螺旋のスロープ
受けた物理攻撃を溜め込んで返せるボディスーツ。
盾を壁にして攻撃する部族。

特に衣装は痺れる出来。
部族単位の集合体であることをパッと見で認識できるし、
衣装のカットもその全てがアフリカ系の体躯があって初めて成立するもの。

襟なしや、立襟でノースリーブ肩出しで直線的な衣装が、長くて筋肉質な肩と腕を引き立てる。
女性も男性もめちゃくちゃセクシーに映る。
これは今のスポーツウェアがまんまそれで、アフリカ系ばっかモデルに起用してるでしょ?
肌が黒い(焼けてる)と、陰影がはっきり出る。
幾何学的なテキスタイルや平面的なテキスタイルと身体の双方が互いを際立たせて魅力的に見せる。

ジム、筋トレがブームの昨今ですけど、間違いなく今より多くの人が次の何年かでまた肌を焼くようになりますよね。
ガングロも復活するかもね。
でも、その体躯に見合うだけの目の大きさがないとバランス崩れるからね、アジア人はそこが不利。

あとはEDMが生活に馴染むものだという証明。
今はどこもかしこもEDMかけてるけど落ち着かない。それが、作中の空間では違和感なく馴染んでた。これはなんでだろうかわからなかったけども。
関係ない話は置いといて。

金の首輪のボディスーツ、攻撃を受けて返すボディスーツ、敵方が盾で攻撃してたのは、
最後の方ですべて伏線回収のごとく、この物語全体のメッセージに掛けたメタファーですよね。

「賢者は橋をかけ、愚者は壁をつくる」
上手いこと持ってきたな〜と。
目立たないように銀を選ぶ主人公。
悪目立ちする金を身につけた敵。


そしてやはり魅力的なキャラクター。
007のQこと杉咲花ちゃんこと、シュリちゃん。最高にキュート。シリアスな物語を軽やかにしてくれてた。

総合的に見て本当に完成度が高くて、『クリード』と同じくまた泣かされた。
というか、親子の話になると基本泣いちゃうんですよね。
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