TAKU

プリデスティネーションのTAKUのレビュー・感想・評価

プリデスティネーション(2014年製作の映画)
4.0
元々観る気があまり起こらなかったので、予告編どころかパッケージの裏表紙さえ見ないという情報完全シャットダウン状態での鑑賞。興味がないのになんで観たのかというと、監督がゾンビ映画の皮を被ったトンデモムービー『アンデッド』のスピエリッグ兄弟だったから。

時間と場所を自在に移動できる政府のエージェントが、1970年代のニューヨークへタイムスリップし、バーテンダーに扮してバーの常連客である通称“未婚の母”という青年に話しかけ、“未婚の母” は驚くべき身の上を語りはじめる。あれ?、どっかで聞いたことがあるような話だぞ。それもそのはずロバート・A・ハインラインの短編『輪廻の蛇』の映画化ではないか。

『輪廻の蛇』が原作なんて知らなかったので、それに気付いてから本作が終わるまで感心しながら観てしまった。というのも、原作の『輪廻の蛇』は長編映画化向きではない短編小説だからだ。主要登場人物は“一応”2人(原作を読んだり、映画を観た人なら“一応”って付けた意味分かるよね)しか登場せず、物語も29ページ程しかない極めてミニマムなもの。しかし、その29ページの中にアクロバットな展開がこれでもかと詰め込まれている。ショートムービーならまだしも、長編映画にしたら『輪廻の蛇』とは全く別の作品が出来てもおかしくないのに、スピエリッグ兄弟は最後までやり切った。

彼らは原作に忠実すぎるほど忠実に、この短篇に出てくるほぼすべての要素をきっちり映像化していた。神出鬼没な連続爆弾魔フィズル・ボマーに関する話が加わったことでミステリー要素が濃くなったこと以外は、余計なネタが入っていない。それどころか、原作以上に時空の渦に巻き込まれてしまった男の悲劇が際立っていたように思う。

無茶としか言いようがない題材を、映画的な盛り上がりをしっかりと肉付けし、かつ話が破綻しないようにまとめあげ、わずか97分の上映時間に収めた監督たちの手腕には脱帽するしかない。スピエリッグ兄弟は『アンデッド』というあんなアホな映画(超褒めている)から着実にステップアップしていて嬉しい気持ちだ。

また、脚本だけでなく、画面や美術による映画のルックの構築度の高さも評価したい。ポストモダン的なSF映画と70年代的な雰囲気のバランスが絶妙で好き。おそらくは、美術スタッフたちが『ゴーストライダー』や『かいじゅうたちのいるところ』などハリウッドの第一線で働いている人たちだからというのも大きいのだろう。

ただ、意地悪な見方な気もするが、原作に比べるとナルシスティックな話だなと感じてしまった。その他にも、ちょっと伏線回収の仕方があざとい。『キサラギ』や『アフタースクール』とかにあった「コレ、伏線ですよ」っていうこれ見よがしなやつ。しかし、観ている間はそういった欠点は感じなかったので、なんだかんだで本作を楽しんだ。

そういえば、2015年は『怒りのデスロード』をはじめ、オーストラリア映画が盛り上がっていた。自分が思い出すだけでも、本作や『ババドック』、『奪還者』など面白いオーストラリア映画に巡り合えた。オーストラリア映画業界にスポットを当てたドキュメンタリー『マッド・ムービーズ ~オーストラリア映画大暴走~』でクエンティン・タランティーノが「オーストラリア映画は最高だぜ。俺はオーストラリア映画のカーチェイスの場面を観ながらオ○ニーできるぜ」なんてこと言ってたっけ。オーストラリア映画をオカズに抜くことができるかどうかは置いといて、今年は「オーストラリア映画サイコ~!!!」って年だった。