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アメリカン・ドリーマー 理想の代償のtransfilmのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

原題は「a most violent year」
J.C.チャンダー監督は、「オールイズロスト」がすごく好きだったので個人的にとても注目している監督。
なので、この映画は「キングスマン」と並んで、今年最も期待していた映画の一つでした。
概ね期待通りで、時間が気にならないくらい
とても面白かった。
ただ、「オールイズロスト」ほどは好きではなかったかな。

登場人物のほとんどは、なんとなく白黒はっきりしない。
ただ、みんなどことなくダーティな雰囲気が漂う。
観終わった後、この登場人物はどういう人間だったのか?
と、色々と考えることができる奥の深いヒューマンドラマだったと思った。

この映画は、登場人物の心情の描き方が細かいです。
以下、個人的に気になったアベルとアンナのシーンです。

●アンナ・モラリス: 鹿を撃ち殺すシーン
(旦那が鹿にとどめをさすことに戸惑いを見せてる隙に、引き金を弾いて代わりにとどめを刺す。そして車に戻ったときになんとなくにやけた表情を見せる。)

アンナは、相手の挑発を受けているのに、旦那が防戦一方で仕返しをしないことに対する不満を感じていて、それを旦那に対してはっきり伝えたシーン。
その後、アベルと言い合いになるシーンで「アンナがギャングの娘」ということがわかるけど、
アンナはアベルの旦那であり、旦那の生き方に合わせる女性である一方で、ギャングの娘としての生き方も捨ててない女性だと思う。
「私をギャングの娘ということを忘れるなよ!」ということを旦那にはっきり主張しているシーンだと思った。

●アベル・モラリス: ジュリアンが自殺した後にとった行動
(ジュリアンが自殺した後、真っ先にとった行動は、オイルタンクに穴が開いたのでそれをふさぐこと。)

アベルは、会社にとって不利益とならない「最も正しい道」を選択し続けるという信念をもっている。汚い手段や、暴力には絶対に加担しない。アンナにとっては「高潔な人間」にみえていたようだけど、このシーンはアベルの考える「最も正しい道」がどういうものなのかがなんとなくわかるシーンだと思う。
このシーン、アンナが、しかめっ面・・なんとなく嫌悪感を感じているようにもみえる表情で旦那をみていたと感じたけど、
この時にアンナは旦那がどういう男だったのかわかったのではないか。と思った。
アベルが「高潔な人間」か?
ジュリアンの自殺前までだったら「YES」の答えもあったけど、このシーンを観た後の自分の答えは「NO」です。
アベルは、元は正義感の強い男だったのかもしれないけど
資本主義社会で成功する。という野心に染まりきってる人間だと思う。そういう人間は、僕は高潔とは思えなかったです。
後、ジュリアンの立場で考えてみたら、アベルはかなり冷酷な人間かな。とも思う。


○俳優の演技について
この映画のジェシカ・チャスティンは、素晴らしい悪女っぷりでした。ものすごく良いキャラクターだったのに、中盤以降は完全に影が薄かったのがちょっと残念でした。
ジェシカ・チャスティンは、「ツリーオブライフ」では聖女。「ゼロ・ダーク・サーティ」では鉄の女。そしてこの映画ではギャングの娘と、何をやってもはまる人だなと思う。
今ハリウッドの中では、ケイト・ブランシェットとか、マリオン・コティヤールとか、ティルダ・スゥイントンと並んで、
特別に演技が上手な女優の一人ではないかと思った。

オスカーアイザックもとても演技が上手かったと思う。ユダヤ系の人なのかな?とかってに思ってたけど、キューバ系の人なんですね。
そして、次にこの人の姿を劇場で観るときは、
ついにフォースの力が覚醒しているということに・・。
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