湿度が高い映画である。冒頭の「草履」のくだりについては、ズルいと思いながらもまんまと映画に引き込まれてしまう。
足の裏にへばり付いたものは一体何だったのか。
人間が生きるということは、足跡をつけることではなく足の裏に予期せぬイロイロを貼り付けながらいずれはそのイロイロを体内に染み込ませ予期せぬタイミングで終わりを迎えるもの、なのかもしれない。
杉浦日向子が語部となって現世に舞い降りたような深川での怪談話たち。特に女郎の「湯呑み話」は映像化だからこその表現。
映画の根底に流れる鈴木雅也氏との兄妹愛。
渡辺あや脚本による熟成された杉浦日向子ワールド。
上野の蓮と雨が哀しく美しい。