さむ

嘘を愛する女のさむのレビュー・感想・評価

嘘を愛する女(2018年製作の映画)
4.0
高橋一生を観に行ったのに、高橋一生はいなかった。
素晴らしい役者の作品を観ると必ず感じることである。

「役作りはしません」と明言する役者ほど、入念かつ繊細に役作りをしているものだ。
高橋一生の芝居における、繊細な仕草に隠された仕掛けを発見するのは、彼の芝居を観る醍醐味でもある。

無意識のうちに身についてしまったであろう、
衣服の裾をさばくための、あの歩き方をはじめとして。

事実は小説よりも奇、であるから、このような話は私自身の手の届く半径にも数多く転がっている。

嘘と真実がボーダーレスになっているこの世界。
だが、それがいかに愛おしいことか。

真実というものは、語れば語るほど嘘になっていくものだから。

予告編を観た限り、この映画は私の地雷を踏むかもしれないという予感があったのだが、まったくの杞憂に終わった。

未来、希望、夢…
分かりやすくて若くて青々しい言葉がたくさん浮かんできた。

…と同時に、私の中の精神における晩年を自覚して、若干の寂しさを感じたのも事実である。
さむ

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