ほんじょー

シン・ゴジラのほんじょーのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
2.0
作品の出来が良いゆえに、価値観が合うか否かで評価が決まる作品。

超上質なお子様ランチ。ストーリーがないゆえに、好きなもの、気持ち良いものをどれだけ詰め込んでも破綻しない。萌えというものは瞬間的な快に訴えるものといえるが、その快の、性愛ではない文化的経験に立脚するバージョンで満たされていた。

ぼくは萌えという感覚が希薄で、快よりも喜びがあるかどうかを大事にしているので、その観点からはこの映画に価値が認められない。愛と憎しみという軸自体がそもそも存在せず、喜びが存在せず、知的な驚きがない。楽しさや喜びから学ぶことができるというのが現代的な発想だと捉えると、危機や苦労から学ぶことができるという教訓も古くさい。

前半のゴジラ撤退後の様子が東日本大震災直後の津波被害地域そっくりで、リアルさを突きつけてきた。災害時に顕著に表れる不条理こそがこの世界の姿、というのはおそらく正しいが、人間の営みとしては不条理とは別に意味のある価値を作り出すことが大事と思う。それがない限り、リアルな描写が生むのは快か皮肉かということになってしまう。

現代日本的という意味ではとても丁寧に作られた良い映画と思うが、ぼくの価値観としては全く乗れない。このように価値観をあらわにさせるという意味では良い芸術作品といえそうだが、それはたまたまそうなったということだろう。

IMAXで観覧。IMAX素晴らしかった。