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ミストレス・アメリカのemilyのレビュー・感想・評価

ミストレス・アメリカ(2015年製作の映画)
3.5
ニューヨークのバーナード大学に入学するも、なかなか馴染めないトレイシーが義姉になるブルックと出会うことで、充実し、満たされていくが、ブルックの生活は転落へ向かっていく。

10歳近く年の離れた真逆の二人。大学生活が全くうまくいっていない消極的なトレイシーと、セクシーで猪突猛進型のブルック。トレイシーは義姉の魅力にどっぷり浸かり、常に彼女と過ごすようになる。自分とは全く違う生き物として、短編小説の題材として捉えるようになり、一緒にいつつも客観的に彼女をそうして自分たちの関係を見つめれてるところがよい部分でありつつ、欠点にもなってしまう。

後半は力関係が逆転するように、二人は足して2で割ればちょうどよいような調和をもたらす。後半ブルックが落ちてからも「義姉になる」という共通点がトレイシーを引っ張り、いつの間にか助ける立ち位置に自然に移っているのだ。それも義姉の人としての魅力なのだろう。同じ空間でいろんなドラマが繰り広げられる終盤の展開も特に喜劇にまで転ぶこともなく、どっちつかずな絶妙な距離感を保ちつつ、最終的には全員で一人を攻め立てる結果に及ぶが、なんともやりすぎ感のないちょうど良い温度感なのだ。

二人で過ごした夢のような時間はあっという間に終わるけど、トレイシーにとってはブルックは"かがり火"のようにずっと眩しく照らし続けていくのだろう。

年の差もあるだろう。転んでも失敗しても我を貫くブルックはやっぱり魅力的である。そうして彼女の存在が、トレイシーの背中を押し、そうして気付かぬところでブルックにとってもそうであるところが、嫌味のないあったかい余韻を残してくれる。欠点があっても魅力的、いや弱みがあるからこそ、より魅力的に輝くのかもしれない。
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