海猫

母と暮せばの海猫のレビュー・感想・評価

母と暮せば(2015年製作の映画)
2.9
最近、山田洋次監督作品を続けて楽しく見たが、この「母と暮せば」はちょっと困ってしまう。ストーリー性があんまりなくて「反戦」というテーマが重くある作品。かなり舞台的な演出をしているように思う。主に吉永小百合の母と、亡霊になって出てくる二宮和也の息子の会話劇メイン。これに演技のアンサンブルがあまり出ていないのが山田洋次監督らしくない。でもって話が、二宮和也の恋人だった黒木華の将来を案じていてどうなるか?程度しかないのでかなり退屈してしまう。一方で、戦争の恐ろしさを描く演出は秀逸で感心した。原爆投下シーンは最低限の映像だけで脅威がわかるようになっているし、戦後の描写もちょっとしたものを画面に見せるだけで爪痕を感じさせる。また、会話で残酷な場面が語られたりすると想像力が刺激されるだけに効果がキツい。というわけで個々の場面ではさすが光るものがあるだけに、起伏がない展開がツラい。「反戦」を訴えたい意図はわかるし実際伝わってはくるのだが、こうもメッセージ性に傾いているのもバランスとしてどうか?と思う。エンドロールの合唱はなんだか気持ち悪く感じて、違う意味で怖かった。山田洋次監督、「反戦」を描こうとするとこうなってしまうのかな?「母べえ」などは訴えようがヒステリックすぎて反感を持ってしまったし。反戦テーマでも「小さいおうち」は抑制が効いた良い映画だったけれども。
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