さく

仁義なき戦いのさくのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い(1973年製作の映画)
5.0
この世界の片隅の片隅に。もはや何度観返したかわからないくらい観ている日本映画、いや世界の映画史上に残る名作シリーズの一本目。元々は坂井鉄也役を菅原文太が演じ、一作完結の予定だったらしいけれど、シリーズ化するため、広能昌三を菅原文太が演じて主役に据え、坂井を松方弘樹が演じることに。結果的にはこの配役変更がハマりまくりで、坂井を演じる松方さんが最高です! この後、シリーズ松方弘樹は別の役(別人)として死んでは蘇る仁義なきゾンビと化すわけですが、どの役もそれぞれ別の魅力があってカッコイイ。

シリーズのプロローグ的な位置づけにもなるのだけれど、元々一本完結で考えられていたせいもあってか、一本の映画としてきちんと完結しているし、完成度も高い。シリーズ物として観たときには三本目の『代理戦争』がエンタメとしてのピークで、それをもって最高傑作とする向きもありますが、一本物として観た場合には本作の完成度の方が高いような気もします。二本目の『広島死闘編』も大好きでこちらも一本物として完結した名作ですし、四作目、五作目の枯れていく感じも好きですけど。要するに全部最高。

出て来る役者全てがもう最高なんですが、やはり『仁義なき戦い』と言えば、山守義雄(金子信雄)。比較的若い頃から山守節は全開。重厚な実録物の雰囲気の中、要所要所で脱力させてくれるとともに、いちいち腹の立つ畜生っぷりが最高(最低!)。菅原文太、小林旭、松方弘樹といったところのキリッと引き締まったシーンと、金子信雄、田中邦衛によるコミカルで弛緩した感じが絶妙に入り混じっているのがこのシリーズの魅力です。他にもカメラワークの凄みとか色々言い出したらキリがないし、私には語れる技量もないので四の五の言わず観ましょう!
さく

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