鰯

はじまりへの旅の鰯のレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
4.2
母の愛した歌

資本主義や都市から距離を置き、山の中で暮らすベンと6人の子供たち。入院中だった母の死をきっかけに、「母の最後の願い」を叶えるため、一家は森を飛び出しニューメキシコまでの2400kmにわたる旅に出る。

タイトルとポスターからてっきり、ほっこりする物語かと思いきや、割とハードに資本主義を忌避した生活をしてて、びっくりしました。冒頭の鹿狩り?から気合が入ってます。
ナチュラル/オーガニックな生活を標榜をしている人はたまにいるけれど、ここまでやる人はなかなかいません。食べるものは自分たちで確保し、難解な専門書や古典を読み、夜になると音楽を奏でる。朝にはきちんとトレーニングを。それでいて子供たちは父に従うだけでなく、自分の意見を言うことが常に求められる

そういったある種振り切った世界から一歩外へ出ると子供達がどうなるか、が面白い。女の子と目を合わせることもできない長兄。周囲に目もくれず、素っ裸で出歩いたり、鶏の締め方を何気なしに聞いたり。警察の追い払い方とか、親戚の子供たちとの知識比べとか、痛快でたまりません。
でもこの辺りのギャップは笑えるんだけど、結構辛い。

その辛さとか痛さとか乗り越えた先のオチのつけ方はかなり好き。割とハードに描いた先で笑えて泣ける結末がきちんと用意されてて幸せでした
それにしてもこどもの演技が最高すぎて、1人1人応援したくなるんですよね。愛おしすぎます。父を演じたヴィゴモーテンセンは文句なしです。
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