鰯

新感染半島 ファイナル・ステージの鰯のレビュー・感想・評価

3.0
カーアクションを観に行く!と吹っ切れば、相当楽しいと思う。スリルや怖さはないので、そこが個人的には残念。

<概要>
感染爆発が半島を崩壊させてから4年後、家族を守れなかった元軍人のジョンソクは、亡命先の香港で廃人のような暮らしを送っていた。そんな彼のもとに、ロックダウンされた半島に戻り、大金を積んだトラックを見つけ、3日以内に帰還するという仕事が舞い込む。だが、潜入に成功したジョンソクのチームを待っていたのは、さらに増殖した感染者たちと、この世の地獄を楽しむ狂気の民兵集団631部隊。両者に追い詰められたジョンソクを助けてくれたのは、母ミンジョンと二人の娘の家族だった。大金を奪えばこの国を出られるという最後の希望にかけて、手を結ぶことにした彼らの決死の作戦とは──?

前作は有無を言わさぬ最高映画。誰だってハードルを上げて見てしまいます。
監督がかなり拘ったともあり、カーアクションは見応えありです。マッドマックスさながらにスピード感MAXで行って帰ってくる展開には振り切っている印象を受け、思わずニヤニヤしてしまいました。出てくる車の特性も魅力的で、よくわからない刃みたいなのが前についた車や、太陽光ばりの照明を搭載した車などなど。主人公チームが乗る車はシンプルながら、ベイビードライバーばりの天才ドライバージュニが見せるテクニックで魅せてくれます。

とここまで書きましたが、最大の疑問は「これ、ゾンビ映画でなくて良いのでは」という感想です。ゾンビが本作では土石流とか自然災害に近い扱いになっている気がして、ゾンビの無駄遣い、みたいな言葉が頭をよぎりました。個人的に見たいのは、元々人間だったという哀愁?みたいなものだったり、真横にいた人が次の瞬間にゾンビかもしれない、みたいな人間不信、疑心暗鬼などなど人間の本性を炙り出すようなシーンだったんです。ちょっと古いのかもしれませんが。。
ある意味この映画は人間の善い部分に対する信念みたいなものが前面に出てきているように思うんです。ゾンビという共通の敵に対して、631部隊には631部隊なりの、ジョンソク達にはジョンソク達の戦い方を披露するものの、それぞれ仲間同士での関係性にほとんど変化がない(631部隊内ではほんの一瞬仲間同士の関係が揺らぐ瞬間が描かれますが、ほんの味付け程度)。

あとは、泣きの演出もかなり冗長な印象を受けました。終盤である仲間を失うシーン(1度でなく、複数回)、「はい、ここ!泣いてください」と言わんばかりのスロー演出と、劇伴が大きくなっていくところ。あれはキツかった。こういった演出、前作でもあったように記憶してるのですが、前回はあまり気にならず。そこまでの蓄積がやや弱いからか、もしくはそもそもゾンビとの闘いから軸がずれてしまっているからか。。

いろいろ書きましたが、こんな大味な感じだけど嫌いになれない映画がコロナ禍の正月に映画館で公開されていることはやっぱり最高だと思いました。
鰯