真田ピロシキ

ハイヒールの男の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ハイヒールの男(2014年製作の映画)
3.4
腕っぷしの強い刑事ユンはトランスジェンダーだった。という筋書きで、弟分も敵であるヤクザの親分すらも男の中の男と憧れる程に屈強な男性の内面が女性である事のズレがドラマになると思ったのだけれど、あまり噛み合っているようには思えず。少年時代に好きだった同級生男子との過去はユンという人間の内面に深く迫っているが、現在においてその同級生の妹チャンミへの態度はユンを分からなくする。女性は恋愛対象だったのか?妹として見てるのかもしれないがその割にキスしてたし、でも最後はあれで混乱。あれだけなりたかった女性としての自分なのに結局極めて男性的な風貌でラストを飾っているのも理解が難しかった。これは欧米の作品を見てるとLGBTQの生き方を選べる土壌があるように見えるが、アジアでは2010年代半ばを持ってもまだまだな現実を描いているのかもしれない。『梨泰院クラス』のヒョニさんも一大イベントだったしね。

そういう訳で物語にはあまり入り込めてなかったが、アクションは韓国アクションでも相当に刺激的で速くてエグい。特に刃物演出に力が込められてて弟分が斬殺される時の嫌らしい音や親分に怒りと嘆きの滅多刺しした時の速いのに重い感じは良い。また弟分を殺した連中にはまず口の中に手をぶち込んでいて、その容赦のなさは『モータルコンバット』に行ってもやって行けそうである。加えてヤクザを敵に回した検事が駐車場で取り囲まれても臆することなくキーを手にヤクザを刺し始めて、この世界は修羅の国すぎる。苦手だからそんなに見ないが韓国映画のバイオレンス表現は流石だと改めて思わされた。