Kuri

アリスのままでのKuriのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
3.7
邦題は"アリスのままで"ですが、
タイトルは"まだアリス(であり続けてる)"ってニュアンスだと思います。

大学教授である主人公アリス。
冒頭と中盤で論文発表をするアリスの姿が映し出されますが、前者は綻びが見えはじめた瞬間で、後者はアルツハイマーの進行により最後の舞台であることが予見されている状態。

才色兼備かつ50歳にして3人の子供を育てあげたアリスは、当然プライドが高くて。見苦しく生きながらえるくらいなら自ら蝶のように美しいまま命を絶とうと予め画策するのですが、病理の前にはそれすらも叶わず。

おそらく50台中盤で優秀な医師であろう夫は自らの立場との葛藤を抱え、苦しむ。
子供たちは家族性アルツハイマーの遺伝への恐怖と母親の変化に戸惑う。

登場人物たちは全て現実に誠実であろうと努力し続けて、
現実は続いていきます。

家族の中でひとり外の世界に飛び出してもがいてる次女が忘れゆく母親に話しかける一言、"母さんはきっと長生きするよ"という言葉は多分正しいと思うんです。
映画のラストシーンで
辛うじて"アリス"であった彼女はいなくなり、それでもまだ生きていく。
そんな最後の瞬間を最後まで誠実に映してるのが印象に残りました。
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