美秋

ボーダーラインの美秋のレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
5.0
主人公ケイトと共に行く麻薬戦争体感ツアー。
彼女と共に不安や恐怖、不条理と対峙し打ちのめされる。善と悪の境界線とは、という普遍的なテーマを説得力のある演出で語り、観客の価値観を嫌というほど揺さぶる。キャラクター、脚本、映像、音楽の全て最高。
冒頭から徐々に不安を煽り、緊張感を高めていく作りに興奮する。全編を通して保たれる緊張感は、主人公が体感するものを共有させる。自分の知らない世界、自分の力ではどうにもならない現実。ヨハン・ヨハンソンのスコアが絶大な効果を上げる。ロジャー・ディーキンスの撮影は言うまでもなく素晴らしい。
作品自体はリアルで淡々としているが、キャラクターは個性的で面白い。正義感溢れるイケメン女性FBI捜査官ケイト。飄々とした振る舞いで、真実を語らずケイトたちを煙に巻くサンダル男マット。中でも作品テーマを最も体現する寡黙で只者じゃないオーラを放ちまくる何らかのプロフェッショナルアレハンドロの存在感。久しぶりにベニチオの凄みを感じた。
美秋

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