アニメが好きな人は吹き替え版で見るとまだマシな感想になるかと。素子とクゼのアナザーストーリー的に思えるので。
押井守「ゴーストインザシェル」の忠実な実写化OPから始まって、アニメのいろいろな要素をモンタージュした二次創作的な映像化。
ハードボイルドな素子の活躍を実写化で観たいという欲求とは若干ズレる。
スカーレットヨハンソンの容姿はサイボーグ感あって、感情移入できない感を出せてたし良かったですね。
衣装もかっこよかったです。
ただ、モンタージュなだけあって、うっすいうっすいものであることは否めない。
いまさらロボット生み出しちゃったストーリーに終始してるのがね。
ロボット系SFを評価する軸は3つだと思っています。
1、「テーマが持つ哲学」
2、「映像表現の新規性」
3、「映る造形の新規性」
1は、基本的に人間の現存に関するものがほとんどです。
言い換えれば、古典的な哲学の命題は、世界や時代が大きく変わっても問われ続けるものということを示すのがSFだと思います。
メトロポリス、ブレードランナー、マトリックス、her、トランセンデンス、エクスマキナ等も基本的には同じテーマを扱っており、「魂」や「心」と「身体」の関係から、人間であること とはなんなのかを探る試みでした。
これにおいて、(無論、漫画・アニメ原作は革新性に満ちていますが)
実写映画としては遅れをとった形になります。ですから、原作抜きに単体で語ろうとすると、薄っぺらく感じてしまうのも無理はありません。そして、原作ではより示唆に富む表現、物語がありましたが、かなり矮小化されている感も否めません。
2、映像表現の上でも、とりたててワクワクするものはありません。予告編でも観られるスーパースローを多用しているので、それもマトリックスで終わってしまっています。
3、造形物の新規性も特にありません。むしろ、アニメ原作×ブレードランナーに寄せた描き方はSFファンとしては好感が持てます。
オープニングシークエンスに予告編でみた数々の胸熱映像があるのですが、なぜか劇場で見ると少しチープに見えました。
芸者ロボットなど、実物を造ったものはかなりいいですね。
という、SF映画という文脈でこの映画単体が持つ重みはさしてありませんが、アニメの純粋実写化の試みは大いに成功しています。
100分で十分に話もまとまっています。
しかし、押井守のいう、ゲームを観ている感覚でありながら、ゲームの壮大な世界観を2時間に"短縮したもの"でしかないというのは納得できます。
まさしく、アクション系ハリウッド映画が闘う相手はゲームであり、ネットドラマになっているというのをひしひしと感じました。