純

エール!の純のレビュー・感想・評価

エール!(2014年製作の映画)
3.9
言葉って良いな、音楽って良いな、家族って良いなと思える1本。フランス映画とは思えない観やすさで驚き。地味だけど展開が丁寧で飾らない良さが好印象だった。

一人娘のポーラ以外、家族は全員耳が聞こえない。設定はアブノーマルだけど予想を裏切る展開は見せないヒューマンドラマ。途中のいわゆる「聾唖者の世界」の演出とかラスト10分がすごく良かった。いろいろな葛藤を抱えながらぶつかりあって、それでも支え合う家族の様子には思わずじーん。「逃げる」と「旅立ち」は違うもんね。

この映画の1番良いところは障害を持つ人たちの描き方かな!序盤では重く捉えすぎず、耳が聞こえないことは自分らしさだ、個性なんだって強気な家族をコミカルに描いているからとても観やすい。でも中盤からはデリケートな部分に徐々に触れていって、ストーリーの軸である「家族か夢か」につながる流れの良さ。障害との向き合わせ方がすごく上手だなと思った。

小さなストーリーの結末がエンドロールでのちょい見せに止まっちゃったとこは残念だったけど、過ぎ去っていく毎日の中で常にわたしたちは選択を迫られていて、ひとつひとつの選択がわたしたちの人生を形作っていくんだなあって思えて、それがとても良かった。

あと、ちょうどわたしの前に座ってらっしゃった4人の年配の方が実際に耳が聞こえない人たちで、手話で会話する彼らを見て、どんな思いでこの映画を観に来られたのかなあって始まる前にすでに感慨ひとしお。この頃涙もろいかも…。

たまらなく家族が愛おしくなる素敵な1本。おすすめ。
純